自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

息切れを抑えるためにできること  ~人生が変わる最高の呼吸法(読後感)~

鼻呼吸により吸いこむ量を減らす
ここが大事

 鼻呼吸が体に良いとはよく言われることです。鼻呼吸とは文字どおり呼気と吸気ともに鼻を通して行う呼吸法です。なぜ、大事なのか、このことについて、表記本を読んだ感想を読後感としてまとめておきたいと思います。

 著者はパトリック・マキューン。著者紹介によれば、子供のころから喘息に苦しめられてきたが、26歳のときに「ビューテイコ呼吸法」と出会い、長年苦しめられてきた喘息の症状から解放された。ロシアでの修行を経て、13年以上にわたってオリンピック金メダリストをはじめとする5000人以上に呼吸法を指導した経験を持つ。

 コロナ禍のなか、酸素飽和濃度計が普及しています。寅三郎はこれまで100%が最も良い状態だとずっと考えてきましたが、それはあり得ないといいます。100%の状態とはヘモグロビンと酸素の結合が強すぎて容易に酸素を手放さない状態だというんです。運動の負荷がかかれば筋肉は酸素を必要としますから、当然、飽和濃度は下がります。運動負荷をかけて息切れがした状態で測ったことがありますが、正常範囲がおよそ94~99%のところ、90%程度まで低下していました。しばらく安静にしていればまた元に戻ります。そもそもヘモグロビンの仕事は酸素を保持することではなく、組織に送り届けることなのですからうなずける話ではあります。ちなみに、人間の体内には常に必要以上の酸素が存在しているとか。体内の酸素は安静時には25%が、運動時には75%が消費されて、残りの酸素は呼気として排出されます。

 では、酸素を組織に多く取り入れるにはどうしたらいいか。深呼吸すればいいではないかと思われますが、深呼吸しても血液中の酸素は増えないと著者はいいます。でも、深呼吸すれば気分がよくなるし、リラックスするではないか、私もこの本を読むまでは、そう思っていました。しかし、どうも違うらしい。「ボーア効果」がはたらくことがその理由のようです。ヒントは酸素ではなくて二酸化炭素のほうにあります。組織で二酸化炭素が発生すると血液中に運ばれ、肺で排出されますが、このときに血液中の二酸化炭素濃度が高まるとヘモグロビンが酸素を手放す(結果、組織に酸素が供給される)ということがあるようです。この反対に、「呼吸過多の状態になると、(吸う息も多いが)吐く息も多くなるので、この結果、肺、血液、組織、細胞の中の二酸化炭素が適量よりも少なくなる。この状態は「低炭酸ガス血症」と呼ばれ、ヘモグロビンが酸素を」手放さなくなるということがあるようです(p54)。ということは、呼吸過多のような状態を起こさないような呼吸を心がければいいことになります。

 深呼吸に話を戻します。深呼吸すると吸い込む空気の量が多くなります。すると連動して吐く息の量も多くなる。必然的に排出される二酸化炭素の量も多くなります。その結果、肺に残る二酸化炭素の量は少なくなる。口呼吸した場合にも同様のことが起こります。ポイントは吐く量です。深呼吸も口呼吸も吐く量が多くなる点で共通しているのです。これは、血液中に(炭酸イオンの形で)溶けている二酸化炭素の量が少なくなることとバランスします。血液中の二酸化炭素の量が少なくなるとヘモグロビンは酸素を手放さなくなる。おそらくは酸素濃度が高い状態が維持されて、組織への受け渡しが渋滞するのでしょう。酸素濃度が正常なのに、慢性的な疲労感に悩まされるのはこういうことが理由らしいです。朝起きて体がだるいという経験はないでしょうか。それは多くは寝ている間に口呼吸になっていて、吐く息が多くなっているために組織の酸素の取り込みが不足していることに原因があると著者は指摘します。であれば、慢性疲労改善には組織が効率よく酸素を受け取れるにはどうしたらいいか、検討する必要があります。そのためには、呼吸の量を適正に保って、肺、血液、組織、細胞の中に残る二酸化炭素の量を適正に保つことだということがわかります。

 では、呼吸の量を適正に保つにはどうすればいいか。繰り返しになりますが、まず、口呼吸をやめて鼻呼吸にすること(寝ている間も鼻呼吸)、また、胸式呼吸はやめて腹式呼吸にすることだと著者は言います。後者は、胸式呼吸だと空気を下の肺まで行き渡らせることができませんが、腹式呼吸だと横隔膜を十分に動かすため下の肺まで空気を行き渡らせることが可能になるというのがその理由です。

 アマゾンに暮すある狩猟民族に同行した研究者の話として、彼らは動物の足跡を見つけると、ランニングまでペースを上げて動物を追いかけ、いよいよ見失っても、見つけたらまた追跡を再開するといった具合に追尾します。運動負荷が相当に大きいが、その際に、常に口を閉じていたことに大変驚いたといった話を紹介しています(p124~125)。~続きは次回に~

 本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。

 ※ little strangeさんのPG使わせていただきました。ありがとうございました。