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血液検査結果からわかること(免疫の働きを踏まえて)

ここからは、文献を参考に免疫の働きについて整理し、あわせて血液検査結果、とりわけアスペルギルスに関わる部分に焦点をあてて考えます。

   まず、免疫の働きについて整理します。細菌(真菌)が侵入すると、パトロール役の顆粒球(好中球や単球)、リンパ球のNK細胞がまずこれをみつけ、貪食します。また、単球は組織に移行した時にマクロファージや樹状細胞に分化して、細菌を貪食すると同時に、その際にヘルパーT細胞に抗原を提示してB細胞に抗体をつくらせます。その一方で、単球は肝臓を刺激してCRPをつくらせます。抗体とCRPが抗原抗体反応を活性化させて溶菌を行うという流れです。

    ウィルスの侵入を受けた場合は、キラーT細胞(T細胞が分化して細胞傷害性を持つに至ったもの)が感染細胞ごと排除する仕組み(細胞性免疫)を持っていて、これに加えて、抗体をつくってウィルスに付着させてNK細胞がそれを貪食する(液性免疫)仕組みを整えていて、この両方を使ってウィルスを排除するようです。

 以上の整理を踏まえて、血液検査を考えます。細菌(真菌)感染した場合、まずは白血球全体の数値が急増します。内訳では、好中球(NEUT)比率が高まります。その後にリンパ球(Lymph)の比率が増えるとみられます。増えるタイミングはわかりませんが、獲得免疫ができるタイミングであれば、数日後ということになります。

 細菌(真菌)感染ののち6時間ほどの時間差をおいて、今度はCRPの値が上昇してきます。ただ、細菌(真菌)感染と違って、一般にウィルス感染では、値の増加は小さいという特徴があります。なので、高熱が出て、ではCRP(炎症反応)も高いかと言えば、それほどでもなく、おかしいなと思ってインフル検査を受けてみたら陽性だったということがあるわけです。

 では、アスペルギルス症の場合、これらの値はどういった変化をするか。アスペルギルスも真菌の仲間なので、基本的にこれまで検討したことがあてはまります。

 寅三郎のこれまでの検査結果を表にまとめましたので、表を基に考えてみます。特徴的なこととして、急性期に(2018年に標準をあてています)、白血球数の急激な増加と、顆粒球割合(ここでは大部分を占める好中球(NEUT)割合を示します)が高く、リンパ球(Lymph)割合が低い状況でした。これに対し、CRP(炎症数値)は高めながら、特段、大きな値を示しませんでした。真菌に罹患当初はCRPが高い値を示したように思いますが、居所を定めてからは(肺に居座ってからは)、免疫細胞が犯人捜しを怠けたのかなあと思っているところです。

 特徴的なことの二つ目として、ヘモグロビン(Hb)の増減があります。表からは罹患前に高い値を示し、急性期(2018年)にかけて次第に低くなって、その後、回復期に移行して再び高くなっていきます。炎症を起こすと、腸管からの鉄の吸収が悪くなることが原因しているようです。侵入した細菌に鉄を奪われないための体の防衛反応(鉄を奪われると細菌(真菌)は増加すると考えられます)ですが、腸管からの吸収を抑えた結果としてヘモグロビンが低い値を示します。ただ、以上の事実を踏まえれば、ヘモグロビン量の増減は、βDグルカンや抗体量(現在の保険適用は抗原量まで)の変化と合わせて考えれば、免疫反応が真菌などをどれだけ抑えているかを簡便にみる目安に使えるのではないかと考えています。

 どこの病院でもそうですが、βDグルカンの値や抗原数値など、カビの側の状況を示すことはしていただけますが、では、それに反応して体がどう対応しているか、言い方を変えれば、自分の体の免疫が、どれだけカビを抑えているかの説明がなかなかしていただけません。簡単ではないことは承知していますが、私だけでなく、患者は、そういった目に見える形での進捗を求めているのではないかと思います。ヘモグロビンの数値の変化をみてある程度判断できることがあれば、改善目標に据えることもでき、気持ちの余裕が生まれるように思うのです。

 なお、表をみるにあたり、慢性期、急性期、回復期は寅三郎の感覚で分類を試みたものです。この病に特有の医学的分類に基づくものではありません。また、常にこの流れを辿るわけでもありません。値も、その時期を代表する数値をとっていて、期間と期間の間でも細かな変動をしています。あらかじめ、ご承知おきください。

 

2013/8

(罹患前)

2016/6

慢性期

2018/9

急性期

2019/11

回復前期

2021/9

回復後期

白血球

3900

4500

9800

6400

4900

顆粒球%

-

72.8

85.4

78.3

61.6

リンパ球%

-

19.2

10.1

14.6

28.5

単球%

-

6.7

1.0

5.3

6.6

ヘモグロビン

15.4

14.1

13.2

13.7

14.1

CRP

-

0.8

2.7

0.51

1.05

 

(参考)

免疫~感染症に対する生体防御|ワクチノーバ株式会社 | Vaxxinova Japan K.K.

単球は組織内に移るとマクロファージになる 漢方医学療法研究会 (e-kanpo.jp)