薬の副作用について

 食べ物が体のなかでどのように分解されて、再利用されるのか、寅三郎もこの病に罹るまではあまり意識したことはありませんでした、しかし、この病にかかって、体重が落ちてなかなか復帰しないことがありました。これは最大の気がかりでした。なにしろ、ふらふらしてまっすぐ歩けない。このことから、必然的に栄養状態のことを真剣に考えるようになりました。ここでも、まず、食品の分解から代謝の過程を整理し、その後、ブイフェンドの副作用について考えていきます。よろしくお付き合いください。

 タンパク質はアミノ酸の球がネックレス状につらなり、それが、らせん状や折り畳まれた形の立体構造をしています。この立体構造は、胃では消化酵素ペプシンの力を借りて、分解が進みます。ペプシンは強い酸性状態で最もよくはたらく酵素です。その後、十二指腸に送られてからは、膵液と混じります。膵液は重曹を含み、胃で酸化された食物を中和します。と同時に中性状態で最もよくはたらくタンパク質分解酵素であるペプチターゼの働きを借りてさらに分解が進みます。膵液は消化液のなかで最強といわれます。「最強」とは、膵液はタンパク質だけでなく、脂肪、炭水化物を分解する消化酵素まで分泌しているテリトリーの広い万能の臓器だからです。ただ、強力な消化液で膵臓自らを消化しないよう、膵臓からは消化液は前駆体(非活性)という形で十二指腸に出されます。いわば、バリヤーをかけられた形で十二指腸に送られ、十二指腸で分解が完成するようになっています。そういったことを考えると、万能の臓器だからこそ、過剰な負担がかかってなにかの事情で保護が破られ、膵液によって傷害をうけるということになれば(膵炎等)、大変なことになります。小腸(空腸)から回腸へ進む頃にはほとんどがアミノ酸に分解されます。ここまでが、分解の過程です。

 その後、アミノ酸は、小腸の上皮粘膜から吸収されたのち、門脈を通じて肝臓に運ばれます(ちなみに、脂質は油溶性のため、リンパ管経由で肝臓に運ばれるとのことです)。肝臓では約2000種の(代謝酵素があって、瞬時に500もの化学反応を起こし、肝細胞1個あたり、一分間に60~100万個のタンパク質を生産しています。アミノ酸はここで新しいタンパク質に生まれ変わり、ヒトの細胞の組織に使われます。もちろん、小腸から吸収され、肝臓に運ばれるものは栄養に限りません。薬なども一部は小腸にある酵素代謝(無害化)されて、大腸経由で排出されますが、残りは小腸腸管から吸収されて肝臓に運ばれます。肝臓で一部は分解(無害化)され、残りが血管を通じて全身に行き渡ることになります。ここまでが代謝の過程です。

 

 ここまでの整理をもとに、副作用の話へ進みます。ブイフェンドは主に三つの副作用があるようです。組織移行性の強い薬であることから、その裏返しとして副作用を及ぼす場面がそれだけ多いということでもあると思います。

 まず最初に、目のチカチカ症状です。これはほとんどの方が経験しているはずです。寅三郎は幻覚まで見る始末でした。参考文献から引用すれば、「VRCZ(ボリコナゾール;寅三郎追記)は,組織移行性の優れた薬剤であり,特に,他の抗真菌薬と比べて,脳脊髄液および眼内への移行性が高」いとのことです。ただ、特に治療を必要とせずに放っておけばそのうち消失するようです。

 第二に、光線過敏の症状がでることです。注意書きでは長袖に帽子をかぶり、皮膚を露出しないように注意すること、皮膚がん等にかからないように日常的に皮膚の状態を注意することというのが挙げられています。理由としては、皮膚に残る薬物が光を吸収してタンパク結合を起こし、これを免疫細胞が異物と判断して攻撃を加えるといったことが関係するようです(以前にペンデイングしておいた血清中でのタンパク結合した薬剤の代謝過程も、免疫細胞によって異物として葬り去られるということなのか?)。

 第三に肝臓への影響です。血液検査結果をみると、抗真菌薬を服用することになってからγGTPとALPの値が急上昇することが挙げられます。いずれも、肝臓でつくられる消化酵素で、胆のうに一時的に蓄積され、胆汁として出されるものです。そこで、胆汁の流れが悪くなると(胆石など)、これらが十二指腸に排出されずに血管に再吸収されて、血液中のγGTP、ALPの値が大きくなると考えられます。この点、副作用に関しては上記流れを辿るわけでもなく、ブイフェンドが酵素阻害を起こす影響で、消化を促進するために肝臓で消化酵素の分泌機能が亢進するということだと思うのですが、よくわかりませんでした。これらの値を下げる目的で、ウルソ(漢方薬としての生薬、熊胆が起源といわれます)が処方されることが多いと思います。消化薬(胆汁酸の代替)です。消化薬を外から補充してあげれば、肝臓はγGTPやALPの生産が抑えられ、負担が軽くなるといったところでしょうか。この点、参考文献から引用すると「胆汁酸とは、簡単に考えると「食物中に含まれる脂質の吸収を助けるために分泌される物質」になります。これにより、食物の消化を助けます。胆汁として胆汁酸が十二指腸から分泌された後、胆汁酸は腸から吸収されて肝臓に戻り、再び胆汁として」使われ、再利用されます。この点、「薬として外から胆汁酸を投与すると、腸肝循環によって胆汁として何回も利用されます。胆汁酸の投与により、胆汁分泌が促進される」ということを意味します。一方で、胆汁酸は肝細胞の組織傷害が強いことがあり、これをウルソに置き換えることで肝臓が受ける傷害が小さくなるといったことも処方の理由のようです。

 寅三郎は、イトラコナゾールのときは、ALPのみが高い数値を示し、ボリコナゾールに変えてからは、γGTP、ALPともに高くなりました。薬の副作用だと思われます。ただ、胆汁酸は脂質の吸収を助けるということなので、であるならば、脂っこいものの摂取を控えれば、数値は下がるのではないかとも思います。寅三郎の数値は現在安定しています。ウルソの処方もありません。

 (参考)

〈症例報告〉 ボリコナゾール投与中に中枢性症状(幻覚・幻視)または視覚障害をきたした6例、加藤秀雄ほか、THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 、VOL69、No3、143-150.

ウルソ(ウルソデオキシコール酸)の作用機序:肝機能改善薬 (kusuri-jouhou.com)

脂肪の代謝とその調節 ―からだのエネルギーバランス― 、大隅 隆、公開講座

※寅三郎のブログをいつもお読みいただき、ありがとうございます。寅三郎にとって、皆様の閲覧が大きな励みとなっており、また、書くことを通して、自分の病と客観的に向き合うことを心がけてきました。このブログは、自分のメモとして今後の参考にするために始めたことでした。なので、自分の言葉で書き記し、わかったこと、わからないことを明示して、今後の修正にゆだねることとしています。そして、ようやく、今日、ここまで来れました。「考察の順序」に沿って悩みながら毎日書き続け、なんとか残り数回を残すだけになりました。今後はペースを落として書いていきます。なお、内容の正確性を確保したい思いから、新しい知見を基に、以前に書いたブログの内容を訂正する場合があります(その場合、末尾に※で訂正年月日などを入れて、最新の内容に更新していきたいと思っています)。あらためて、これまで、お読みいただきありがとうございました。引き続き、よろしくお付き合いいただければ幸いです。