自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

ヒトは脳が発達したために余計なことに悩むようになり、治りづらくなった。

 NHKの番組「チコちゃんに叱られる」をみていたら、ヒトの先祖は肉食獣の食べ残した硬い骨のなかの骨髄を食べるために、石を使うことを覚え、そのために親指が発達したということをやっていました。動物のなかでヒトほど親指が太い動物はほとんどいないそうです。

 440万年前、人類の祖先は森の中で果実や木の葉を食べて暮らしていましたが、その後、地殻変動が起きて、森は乾燥地帯に変化します。二足歩行を手に入れた人類の祖先は生きるために草原地帯へと進出します。まだ狩りをする技術はなく、逆に肉食獣の餌食になることを避けながら、おこぼれ(肉食獣が食べ残した骨)を食料とするほかはなかったといいます。

 しかし、骨はあまりにも硬い。硬い骨を割るには道具を使うしかありません。たまたま近くにあった石を手にした祖先はこれで割れば中身が取り出せることを学びます。やがて道具として石を握りしめる習慣ができ、それが親指を太く発達させることになったとか。そのおかげで骨髄を食べるようになったが、骨髄は栄養が豊富なため、意図せず脳の大きさが400ccからおよそ3倍の1000ccに増えたとのことです。現在の人類の脳の大きさはおよそ1500ccです。

 これは、研究者の仮説ではありますが、考えさせられるものがあります。偶然の連鎖が、ヒトの脳の発達を促したという点です。人類の祖先はたまたま肉食獣が食べ残した骨の中の骨髄を食べるしか手がなかった。それが硬かったために、偶然に石を使うことを覚えた。それが親指を発達させた、と同時に骨髄の栄養のおかげで脳の発達も促した。ここまでが偶然の連鎖でつながっているからです。それが、もし、チンパンジーだったとしたら、現在のヒトは存在せず、チンパンジーがヒトたる地位にいたかもしれません。

 ところで、脳が発達したことはよいことなのですが、そのために余計なことでも悩むようになったのではとも思います。このことで、中村天風さん(結核に若いころに罹患し、それを自力で克服、天寿を全うした)の体験談で、興味深い話があったのでご紹介します。天風は、(当時、死の病と恐れられた)結核を治すため、一縷の望みを抱いて、カリアッパ聖者に従ってヒマラヤの秘境で修業をしていたことがあるそうです。聖者の膝の上をみればイヌが一匹。聖者は、ナイフを取り出すといきなり犬の前足をサッと傷つけます。驚いたイヌは叫び声をあげて逃げていきました。しかし、話はそこで終わりません。今度は、天風の右手首を取るやいなや、腕をサッと切りつけます。天風はびっくりして、師に対し「何をする!」と一喝しました。聖者は「イヌとお前と、どちらが先に傷を治すか、やってみよ」と悠然と答えました。すでに重い結核の病を抱えている天風にとって、傷口に雑菌が入れば、それこそ命取りになりかねません。

 傷をかばって、1週間が過ぎたころ、天風は再び聖者の部屋に呼ばれます。聖者の膝には先日のイヌが座っていました。「傷を見せてみよ」といわれ、みせると、傷口は赤く腫れあがり、痛みがありました。「イヌの傷は、もう跡形もなく治っているぞ。お前はどうして治らないのか。」聖者は質問します。

 自然免疫力ではイヌもヒトもそんなに変わらないはずです。にも拘わらず、イヌが早く治り、ヒトの治りが遅かったのはなぜか。それは、ヒトは余計なことを考えて免疫力を落としているからに違いありません。

 ヒトの免疫は7割が腸にあり、残りの3割が心にあるという方がいます。正確には腸以外の臓器や皮膚、粘膜などに3割あるというべきなんでしょう。それが心であるはずがない。全身のリンパ系に残りの免疫細胞が配置されているはずですから。だからこそ、水際で阻止できる仕組みを整えているわけで、そのことを百も承知で、あえてなぜ、心にこだわるのか、それは、自律神経が免疫細胞を動かしているからという点だろうと考えます。たとえば、交感神経の末端からアドレナリンが放出され、顆粒球(好中球)が増えます。その一方で、副交感神経の末端からはアセチルコリンが放出され、リンパ球が多くなります。

 交感神経はたとえば、仕事を始めるについて体を活動的にさせるほうに働く神経です。これに対し、副交感神経は消化吸収を促進させたり、体を休めるほうにはたらく神経です。この消化吸収(副交感神経のはたらき)とそれを元にエネルギーをつくる(交感神経の働き)をコントロールすることは、健康維持にとって、とても大事なことのように思えます。もともと、自律神経をコントロールすることができませんが、自律的に正常な働きをさせることは、訓練によって可能となるようですので、次回はそのことに触れたいと思います。

(参考)

中村天風 怒らない 恐れない 悲しまない 、池田光著、三笠書房、2010.

薬の副作用について

 食べ物が体のなかでどのように分解されて、再利用されるのか、寅三郎もこの病に罹るまではあまり意識したことはありませんでした、しかし、この病にかかって、体重が落ちてなかなか復帰しないことがありました。これは最大の気がかりでした。なにしろ、ふらふらしてまっすぐ歩けない。このことから、必然的に栄養状態のことを真剣に考えるようになりました。ここでも、まず、食品の分解から代謝の過程を整理し、その後、ブイフェンドの副作用について考えていきます。よろしくお付き合いください。

 タンパク質はアミノ酸の球がネックレス状につらなり、それが、らせん状や折り畳まれた形の立体構造をしています。この立体構造は、胃では消化酵素ペプシンの力を借りて、分解が進みます。ペプシンは強い酸性状態で最もよくはたらく酵素です。その後、十二指腸に送られてからは、膵液と混じります。膵液は重曹を含み、胃で酸化された食物を中和します。と同時に中性状態で最もよくはたらくタンパク質分解酵素であるペプチターゼの働きを借りてさらに分解が進みます。膵液は消化液のなかで最強といわれます。「最強」とは、膵液はタンパク質だけでなく、脂肪、炭水化物を分解する消化酵素まで分泌しているテリトリーの広い万能の臓器だからです。ただ、強力な消化液で膵臓自らを消化しないよう、膵臓からは消化液は前駆体(非活性)という形で十二指腸に出されます。いわば、バリヤーをかけられた形で十二指腸に送られ、十二指腸で分解が完成するようになっています。そういったことを考えると、万能の臓器だからこそ、過剰な負担がかかってなにかの事情で保護が破られ、膵液によって傷害をうけるということになれば(膵炎等)、大変なことになります。小腸(空腸)から回腸へ進む頃にはほとんどがアミノ酸に分解されます。ここまでが、分解の過程です。

 その後、アミノ酸は、小腸の上皮粘膜から吸収されたのち、門脈を通じて肝臓に運ばれます(ちなみに、脂質は油溶性のため、リンパ管経由で肝臓に運ばれるとのことです)。肝臓では約2000種の(代謝酵素があって、瞬時に500もの化学反応を起こし、肝細胞1個あたり、一分間に60~100万個のタンパク質を生産しています。アミノ酸はここで新しいタンパク質に生まれ変わり、ヒトの細胞の組織に使われます。もちろん、小腸から吸収され、肝臓に運ばれるものは栄養に限りません。薬なども一部は小腸にある酵素代謝(無害化)されて、大腸経由で排出されますが、残りは小腸腸管から吸収されて肝臓に運ばれます。肝臓で一部は分解(無害化)され、残りが血管を通じて全身に行き渡ることになります。ここまでが代謝の過程です。

 

 ここまでの整理をもとに、副作用の話へ進みます。ブイフェンドは主に三つの副作用があるようです。組織移行性の強い薬であることから、その裏返しとして副作用を及ぼす場面がそれだけ多いということでもあると思います。

 まず最初に、目のチカチカ症状です。これはほとんどの方が経験しているはずです。寅三郎は幻覚まで見る始末でした。参考文献から引用すれば、「VRCZ(ボリコナゾール;寅三郎追記)は,組織移行性の優れた薬剤であり,特に,他の抗真菌薬と比べて,脳脊髄液および眼内への移行性が高」いとのことです。ただ、特に治療を必要とせずに放っておけばそのうち消失するようです。

 第二に、光線過敏の症状がでることです。注意書きでは長袖に帽子をかぶり、皮膚を露出しないように注意すること、皮膚がん等にかからないように日常的に皮膚の状態を注意することというのが挙げられています。理由としては、皮膚に残る薬物が光を吸収してタンパク結合を起こし、これを免疫細胞が異物と判断して攻撃を加えるといったことが関係するようです(以前にペンデイングしておいた血清中でのタンパク結合した薬剤の代謝過程も、免疫細胞によって異物として葬り去られるということなのか?)。

 第三に肝臓への影響です。血液検査結果をみると、抗真菌薬を服用することになってからγGTPとALPの値が急上昇することが挙げられます。いずれも、肝臓でつくられる消化酵素で、胆のうに一時的に蓄積され、胆汁として出されるものです。そこで、胆汁の流れが悪くなると(胆石など)、これらが十二指腸に排出されずに血管に再吸収されて、血液中のγGTP、ALPの値が大きくなると考えられます。この点、副作用に関しては上記流れを辿るわけでもなく、ブイフェンドが酵素阻害を起こす影響で、消化を促進するために肝臓で消化酵素の分泌機能が亢進するということだと思うのですが、よくわかりませんでした。これらの値を下げる目的で、ウルソ(漢方薬としての生薬、熊胆が起源といわれます)が処方されることが多いと思います。消化薬(胆汁酸の代替)です。消化薬を外から補充してあげれば、肝臓はγGTPやALPの生産が抑えられ、負担が軽くなるといったところでしょうか。この点、参考文献から引用すると「胆汁酸とは、簡単に考えると「食物中に含まれる脂質の吸収を助けるために分泌される物質」になります。これにより、食物の消化を助けます。胆汁として胆汁酸が十二指腸から分泌された後、胆汁酸は腸から吸収されて肝臓に戻り、再び胆汁として」使われ、再利用されます。この点、「薬として外から胆汁酸を投与すると、腸肝循環によって胆汁として何回も利用されます。胆汁酸の投与により、胆汁分泌が促進される」ということを意味します。一方で、胆汁酸は肝細胞の組織傷害が強いことがあり、これをウルソに置き換えることで肝臓が受ける傷害が小さくなるといったことも処方の理由のようです。

 寅三郎は、イトラコナゾールのときは、ALPのみが高い数値を示し、ボリコナゾールに変えてからは、γGTP、ALPともに高くなりました。薬の副作用だと思われます。ただ、胆汁酸は脂質の吸収を助けるということなので、であるならば、脂っこいものの摂取を控えれば、数値は下がるのではないかとも思います。寅三郎の数値は現在安定しています。ウルソの処方もありません。

 (参考)

〈症例報告〉 ボリコナゾール投与中に中枢性症状(幻覚・幻視)または視覚障害をきたした6例、加藤秀雄ほか、THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 、VOL69、No3、143-150.

ウルソ(ウルソデオキシコール酸)の作用機序:肝機能改善薬 (kusuri-jouhou.com)

脂肪の代謝とその調節 ―からだのエネルギーバランス― 、大隅 隆、公開講座

※寅三郎のブログをいつもお読みいただき、ありがとうございます。寅三郎にとって、皆様の閲覧が大きな励みとなっており、また、書くことを通して、自分の病と客観的に向き合うことを心がけてきました。このブログは、自分のメモとして今後の参考にするために始めたことでした。なので、自分の言葉で書き記し、わかったこと、わからないことを明示して、今後の修正にゆだねることとしています。そして、ようやく、今日、ここまで来れました。「考察の順序」に沿って悩みながら毎日書き続け、なんとか残り数回を残すだけになりました。今後はペースを落として書いていきます。なお、内容の正確性を確保したい思いから、新しい知見を基に、以前に書いたブログの内容を訂正する場合があります(その場合、末尾に※で訂正年月日などを入れて、最新の内容に更新していきたいと思っています)。あらためて、これまで、お読みいただきありがとうございました。引き続き、よろしくお付き合いいただければ幸いです。

免疫を高める漢方薬について

 この病に罹って、寅三郎はこれまでに補中益気湯(エキス剤)、十全大補湯(生薬)を処方いただき、それなりの効果を実感してきました。西洋薬の場合、酵素阻害薬などを考えれば明らかなように、酵素の働きを阻害することで、体内での生化学反応を先に進めなくして所定の効果を出す薬なので、原因と結果が一対一に対応しています。これに対して、漢方薬の場合、補中益気湯十全大補湯いずれにしても、様々な生薬を組み合わせて構成されているため、このうちどれが効いて効果が得られているのか、なかなか説明が難しい点があります。この意味で、漢方薬はいってみれば総合感冒薬のようなものではないかとの思いが寅三郎にはありました。

 ところが、最近、補中益気湯が、リンパ球のヘルパーT細胞の働きを直接強めることに言及したとみられる文献を見つけました。引用すれば、補中益気湯は「腸管上皮間リンパ球からのインターフェロンγ産生によりマクロファージを活性化」する働きがあるとするものです。リンパ球の働きについては、別の参考文献からの引用で恐縮ですがヘルパーT細胞は、「B細胞に作用して抗体をつくり出させること」と、「マクロファージやキラーT細胞に攻撃指令を与えて活性化させる」ことの二つの働きがあるとされます。このうち、補中益気湯についての上記論文の言及は後者に関連したものとみられます。もしそうであるなら、漢方薬としての免疫賦活薬は、少なくとも補中益気湯に関する限りは、免疫細胞に直接働きかける一対一の効果を持つと考えることができそうです。おそらくは十全大補湯も同様の作用機序を持つのでしょう。免疫力を直接高める薬剤は、西洋薬にはないとのことですので、ブイフェンドを服用すると同時に、こういった漢方薬の併用も有効ではないかと考えた次第です。先生にご相談すれば、エキス剤がもらえるはずです。ただ、漢方薬(エキス剤)は食間で、ブイフェンドも食間です。同じ時間帯で飲んでもよいと思いますが、確認が必要です。

 一方で、最近は免疫細胞の司令塔であるヘルパーT細胞を刺激して免疫機能の活性化を及ぼすものや、NK細胞を活性化させる食品なども市販されています。これらを上手に取り入れていきたい。ただ、サプリに頼りすぎることは避けたい。理由の一つに、食品からとれば消化酵素も同時に摂取できますが、サプリからとれば、サプリの消化酵素は体内の消化酵素を使わざるを得なくなるということがあります。その分、代謝に回す分が減るのではないかと考えられます。

(参考)

キラーT細胞の役割 (wakarugantenittmgd.com)

漢方薬の免疫薬理作用 ―慢性疾患の改善作用の主要機序として― 、川喜多卓也、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)132,276~279(2008)

薬剤(小腸から吸収~代謝~分布~排泄)

 ここでは、ボリコナゾール(商品名ブイフェンド)について、薬の働く仕組みについて簡単に触れ、小腸で吸収された後、体から排出されるまでを考えてみたいと思います。

 まず、ブイフェンドが組織で働く仕組みについてです。この薬は、ヒトと真菌の構造の違いに着目して創薬されたものです。ヒトも真菌も核を有する細胞で構成されていますが、細胞を包む膜に違いがあります。ヒトの細胞は主にコレステロールで包まれますが、真菌はエルゴステロールで包まれます。コレステロールと同様の働きをするようです。このエルゴステロールの形成を妨げることに着目した薬がボリコナゾールです。小腸や肝臓での代謝をすり抜けることから、経口薬でも点滴と同じくらいの薬物量が血管内に入っていくようです。また、全身の組織への浸透性も広範囲であることから、よく効く薬であることは確かですが、その分、副作用も半端ないくらいに強い。肝臓はいうに及ばず、視神経への異常を引き起こすこともあります。寅三郎も、幻覚を見ました。副作用であることは事前に伺っていたので、いずれ消失するものとたかをくくって幻覚を楽しんでいたところも若干はありますが(笑)。

 つぎに、小腸の腸管からの吸収から先を考えます。薬の代謝(解毒)に重要な役割を示すのがシトクロムP450酵素(CYP;俗にシップ)です。この酵素は主に肝臓で薬剤の分解(解毒)に働きますが、ほかに小腸や腎臓などの多くの臓器にも存在するといわれています。様々な種類がありますが、そのうち薬の約半数の代謝に関わる酵素がCYP3A4で、小腸と肝臓に存在するようです。

※小腸から吸収

CYP3A4について。たとえば、高血圧の薬の一部、高コレステロール改善薬など、カルシウム拮抗薬を処方されたときに、グレープフルーツジュースを一緒に飲まないようにと、注意書きが書かれていることがあります。これは、グレープフルーツの成分が小腸粘膜上にあるCYP3A4という酵素の働きを阻害することで、薬の分解が進まず、そのまま小腸腸管から吸収されて、最終的に血管に届き、薬の効きが強すぎることがあるようです。

代謝

薬剤は小腸腸管から吸収され、門脈を通って肝臓に運ばれ、今度は肝臓で代謝され、無毒化が図られます。肝臓では酵素(シトクロムP450;鉄を含むタンパク質の一種)が薬物の代謝を担います。代表的な働きのひとつとして、油溶性に作られていることの多い薬に水酸化イオン(OH-)を結合させて、水溶性に変えることで、腎臓から排出されやすくするといった働きがあります。この酵素代謝される薬剤の種類は多く、このため代謝を阻害する(代謝を邪魔する)薬剤があると問題になります。

 たとえば、循環器用の薬もCYP3A4の酵素の働きによって代謝されますが、この酵素の働きを阻害する薬(抗真菌薬、とりわけイトラコナゾール)をあわせて服用した場合、循環器用の薬はイトラコナゾールによって(酵素の働きを)阻害されて、分解が進まず、血中濃度が高くなりすぎるといったことがあるようです。このことは処方薬同士に関わらず、一時的に市販薬も飲んでみようとするような場合にも同様の問題が起こりえます。市販薬だから効果も弱く、大丈夫なはずだではなしに、処方薬を飲んでいる方が、市販薬を合わせて飲む場合は、薬局に事前に確認することが重要です。

※分布

肝臓での代謝を免れた薬は、その一部が血漿(血液の上澄み)に含まれるタンパク質(だいたいはアルブミン)と結合します。結合を免れた残りだけが遊離薬剤となって、薬効を及ぼすことになります。なぜ、タンパク質と結合するのか、薬が組織に働くために油溶性につくられていて、そもそも細胞膜表面に付着しやすい構造になっているためではないかと想像しますが、寅三郎には本当のところはわかりません。ともあれ、これらが肝静脈を通じて心臓に戻り、動脈を通じて全身の組織にゆき渡るようになります。

※排泄

遊離薬剤は、腎臓の糸球体で血液からろ過されて尿として排出されます。では、タンパク結合した薬剤はどこで代謝されるか、文献を漁ってみましたがよくわかりませんでした。おそらくは、腎臓でタンパク結合を解かれて、ろ過されて尿として排出され、タンパク質はろ過されずに血液中に残り、再利用されるといった流れかと思います。ここで、何らかの原因で腎臓の働きが低下していると、再利用されずにそのまま尿中に排出されることがあり、これがタンパク尿といわれるものです。ただ、常に腎臓の病気ということではなく、一時的な不調の場合もこのようなことがあるようですので、過度な心配は無用ということでしょうか。

 薬剤が体外に排出されるもう一つの仕組みが、ウンチです。肝臓で作られた胆汁(消化液)が胆のうで一時貯蔵されますが、胆のうからこの胆汁がでて、十二指腸に排出され、大腸へ送られてウンチのなかに排出されるようです。ウンチの色は胆汁の黄褐色を反映して黄色をしているとか。<(_ _)>

 末尾に、ブイフェンドを長く飲んで真菌が薬害耐性を持つようになったら、薬が効かなくなるのではないかと心配される方も多いと思います。お気持ちはよくわかります。ただ、寅三郎はイトラコナゾールを6年内服して耐性は起きませんでした。それどころか、6年後にはβDグルカンの数値は6以下となり、改善がみられました。それでもブイフェンドに切り替えたのは袋の中のカビが減ることがなかったためです。実際、ブイフェンドに切り替えてから8か月も経過した頃は、袋の中が空っぽになりました。

 この点、コロナウィルスのように、球形の周りにスパイクをたくさん持っている構造であれば、変異はわかりやすいのですが、細胞壁の下にエルゴステロールで覆われた構造を有する真菌が、はたして細胞膜をどう変化させて耐性をつくりだすことができるのか、寅三郎には理解の及ばないところです。もし、そうだとしたら、ヒトの細胞膜だって、真菌に長くさらされるうちに耐性を持ったとしてもいいではないですか。なぜ、真菌は耐性を持って、ヒトの細胞は耐性を持たないのか。調子に乗って言い過ぎた感があります。<(_ _)>。高等動物であるヒトは細胞膜での変異という選択肢を捨てて、免疫システムを採用することにしたのでしょう。先日、耐性を持った真菌細胞を遺伝子操作の働きでリセットし、耐性を失わせることに日本の学者が世界で初めて成功したとの情報を同じ闘病の方から伺いました。5年ほど前に発表された論文だそうです。創薬として期待が持てる成果です。

 ただ、あらためて考えるに、真菌が耐性をもったとしても、鉄を奪えば増殖は妨げられます。また、ヒトの体には本来備わった細胞性免疫と液性免疫があって、これらに常時守られています。先のことを心配してもしかたがない。そうであれば、できることはただ一つ。免疫が働きやすい環境を作ってやること。これに尽きる気がします。

 最後に新薬の開発に向けた話題です。

 急性膵炎の薬で、ウリナスタチンがあって、これを抗真菌薬(アンフォテリシンB)と併用することで、アスペルギローマの空洞内の菌球が消失したとする論文を見つけました。ウリナスタチンは急性膵炎の薬ですが、膵臓は、様々な消化酵素を出す万能の器官で、膵臓が炎症を受けると、これら消化酵素の働きで膵臓自体がダメージを受けます。このため、消化酵素の働きを阻害して、膵臓へのダメージを減らそうとするのが、ウリナスタチンです。アブストラクトゆえ、作用機序の詳細は確認できませんでした。また、論文発表から20年ほどもたって、まだ、深在性の真菌症に対する標準治療に採用されていないところを考えると、副作用など、気になるところがあるのでしょうか。今後の進展に注目していきたいと考えています。

(参考)

ブイフェンド(ボリコナゾール)の作用機序:抗真菌薬 (kusuri-jouhou.com)

シトクロムP450とは? | ネットdeカガク (netdekagaku.com)

CYP(シトクロムP450)による薬物代謝と薬物相互作用について解説 - 薬剤師による調剤薬局の仕事解説 (chouzai-pharmacy.com)

Aspergillus fumigatus から産生されるエラスターゼ(病原因子しての意義と対策)、小川ほか.

抗真菌薬とウリナスタチンとの併用療法が奏効した慢性壊死性肺アスペルギルス症の1例 (jst.go.jp)

病に強い身体をつくるために必要なこととは?

 これまで、免疫の働きをメインに考えてきました。これは、この病(アスペルギルス)に立ち向かうには、やはり免疫が鍵を握ると考えたことによりますが、では、免疫を強めただけで問題が解決するかといえば、そう簡単な話でもなく、免疫が働きやすい環境を作ってやることが大事だということに気が付きました。

 これは、私たちの働く環境を考えればわかることです。会社、例えば清掃会社を例に考えてみましょう。面接で頭数が確保できた、研修施設を持っていて、社内研修もやった。配属先が決まり、それぞれの役割分担も明確になった。では、清掃能力を上げられるかといえばそう簡単な話でもない。たとえば残業時間がやたら多いとどうでしょうか。やってらんない。くたくたになって処理能力は当然落ちます。この点、人材にゆとりがあって、「お前、疲れたなら帰って休めよ。あとは〇〇にやらせるから」みたいな環境だと、処理能力が落ちることはありません。また、休憩時間があって、美味しいお茶とお菓子なんて出される会社だったら、頑張ろうという気になります。当然、体力、気力を充実させるだけの給与も必要でしょう。事務方のことも考える必要があります。たとえば事務のAさんが体調を崩して休んだとして、一時的にその方の仕事を残りの方が処理せざるを得ないといったことを考えると、二人分の仕事をしなくてはいけないことになる。それで忙しくなったからといって、給与を出すのが遅れたなんてことにでもなれば、それこそ処理能力が落ちることになりませんか。

 急な災害が起きて、清掃能力が大幅にダウンした場合を考えると、もっと深刻です。自力で立ち行かなくなったときに、では丸ごと事業を譲り渡すか、なんてなかなか考えないでしょう。そうとなれば、従業員だって解雇されるかもしれないし、そうでなくても待遇も悪くなることは考えられます。ではどうするか、外部から強力な応援部隊を依頼することで対処しようとします。その際に大事になってくるのは、受け入れ先でイニシャテイブをとることです。イニシャテイブを取って、どれだけの人数の応援部隊を必要とするかを決めて依頼する。全部を受け入れても対応しきれないからです。また、処理能力が回復したときには応援部隊にはすみやかに帰っていただかないといけない。いつまでも残っていただいたら、食事も提供しなくてはいけないし、正規社員と意見がぶつかったりして、以前の処理能力よりも落ちてしまうことになりかねません。

 長々とたとえ話をしましたが、こういった話の中に、実は健康を回復するヒントがあるように思います。それは、いくら免疫細胞がひとりで頑張ったところで、どうしようもないということです。体内環境を整えて、いつでも免疫細胞が働きやすい環境にしておかないといけない。

 そのためには、自分の健康は自分で守るといった心構えを持つことがまず大事です。医者任せでは病気は治りません。その意味で、医者は患者の応援団に過ぎないのであって、どんなに優秀であっても、医者が代わりに走り出すことはできない。患者自身が走り出さないことには何も始まらないということをまずは自覚することが重要です。

 つぎは、体のメンテです。体の中で代謝酵素が十分に使えるように、消化酵素は潤沢にしておかないといけない。とりわけ肝臓では多くの代謝が行われて様々な物質が作られます。その化学反応を促進するのが酵素です。しかも、消化酵素が不足をきたすと代謝酵素は代わりを務め、結果的に代謝不足を生じさせます。このように考えると、代謝不足に備えるには、消化酵素が不足をきたさないことが重要となります。加えて、代謝酵素は鉄を使うことがありますので、鉄の補充も考えないといけない。この点、もともと体内の鉄の管理は一定以上確保されているようです。また、鉄はそんなに体内に吸収されやすいものでもどうもなさそうです。そうなると、寅三郎がひそかに期待しているのが、ラクトフェリンです。鉄の管理を引き受けてくれるし、場合により、細菌(真菌)から鉄を奪い取って増殖を抑えることも期待されるからです。

 つぎに、大事なことが、栄養補給です。A. Marcosらの論文(2003)によれば「エネルギーや主要栄養素の摂取不足や特定の微量栄養素の欠乏による栄養不足は、免疫系を損ない、宿主保護の基本となる免疫機能を抑制します。最も一貫した異常は、細胞性免疫、補体系、貪食機能、サイトカイン産生、粘膜分泌抗体応答、および抗体親和性」に影響を与えると考えられます。胸腺の委縮にも関係するようです。そう考えると、三食きちんと食べて、よく寝て、ストレスを長く貯めない生活が望まれます。

 最後に、薬の効く仕組み、代謝に至るまでの過程が重要となります。薬が効きすぎても困るし、また、代謝されずに体内に残っても困るからです。この点を次回に少し敷衍して検討していきます。理解不足もあるかもしれませんが、お付き合いください。

(参考文献)

Marcos, A., Nova, E. & Montero, A. Changes in the immune system are conditioned by nutrition. Eur J Clin Nut 57, S66–S69 (2003).

血液検査結果からわかること(免疫の働きを踏まえて)

ここからは、文献を参考に免疫の働きについて整理し、あわせて血液検査結果、とりわけアスペルギルスに関わる部分に焦点をあてて考えます。

   まず、免疫の働きについて整理します。細菌(真菌)が侵入すると、パトロール役の顆粒球(好中球や単球)、リンパ球のNK細胞がまずこれをみつけ、貪食します。また、単球は組織に移行した時にマクロファージや樹状細胞に分化して、細菌を貪食すると同時に、その際にヘルパーT細胞に抗原を提示してB細胞に抗体をつくらせます。その一方で、単球は肝臓を刺激してCRPをつくらせます。抗体とCRPが抗原抗体反応を活性化させて溶菌を行うという流れです。

    ウィルスの侵入を受けた場合は、キラーT細胞(T細胞が分化して細胞傷害性を持つに至ったもの)が感染細胞ごと排除する仕組み(細胞性免疫)を持っていて、これに加えて、抗体をつくってウィルスに付着させてNK細胞がそれを貪食する(液性免疫)仕組みを整えていて、この両方を使ってウィルスを排除するようです。

 以上の整理を踏まえて、血液検査を考えます。細菌(真菌)感染した場合、まずは白血球全体の数値が急増します。内訳では、好中球(NEUT)比率が高まります。その後にリンパ球(Lymph)の比率が増えるとみられます。増えるタイミングはわかりませんが、獲得免疫ができるタイミングであれば、数日後ということになります。

 細菌(真菌)感染ののち6時間ほどの時間差をおいて、今度はCRPの値が上昇してきます。ただ、細菌(真菌)感染と違って、一般にウィルス感染では、値の増加は小さいという特徴があります。なので、高熱が出て、ではCRP(炎症反応)も高いかと言えば、それほどでもなく、おかしいなと思ってインフル検査を受けてみたら陽性だったということがあるわけです。

 では、アスペルギルス症の場合、これらの値はどういった変化をするか。アスペルギルスも真菌の仲間なので、基本的にこれまで検討したことがあてはまります。

 寅三郎のこれまでの検査結果を表にまとめましたので、表を基に考えてみます。特徴的なこととして、急性期に(2018年に標準をあてています)、白血球数の急激な増加と、顆粒球割合(ここでは大部分を占める好中球(NEUT)割合を示します)が高く、リンパ球(Lymph)割合が低い状況でした。これに対し、CRP(炎症数値)は高めながら、特段、大きな値を示しませんでした。真菌に罹患当初はCRPが高い値を示したように思いますが、居所を定めてからは(肺に居座ってからは)、免疫細胞が犯人捜しを怠けたのかなあと思っているところです。

 特徴的なことの二つ目として、ヘモグロビン(Hb)の増減があります。表からは罹患前に高い値を示し、急性期(2018年)にかけて次第に低くなって、その後、回復期に移行して再び高くなっていきます。炎症を起こすと、腸管からの鉄の吸収が悪くなることが原因しているようです。侵入した細菌に鉄を奪われないための体の防衛反応(鉄を奪われると細菌(真菌)は増加すると考えられます)ですが、腸管からの吸収を抑えた結果としてヘモグロビンが低い値を示します。ただ、以上の事実を踏まえれば、ヘモグロビン量の増減は、βDグルカンや抗体量(現在の保険適用は抗原量まで)の変化と合わせて考えれば、免疫反応が真菌などをどれだけ抑えているかを簡便にみる目安に使えるのではないかと考えています。

 どこの病院でもそうですが、βDグルカンの値や抗原数値など、カビの側の状況を示すことはしていただけますが、では、それに反応して体がどう対応しているか、言い方を変えれば、自分の体の免疫が、どれだけカビを抑えているかの説明がなかなかしていただけません。簡単ではないことは承知していますが、私だけでなく、患者は、そういった目に見える形での進捗を求めているのではないかと思います。ヘモグロビンの数値の変化をみてある程度判断できることがあれば、改善目標に据えることもでき、気持ちの余裕が生まれるように思うのです。

 なお、表をみるにあたり、慢性期、急性期、回復期は寅三郎の感覚で分類を試みたものです。この病に特有の医学的分類に基づくものではありません。また、常にこの流れを辿るわけでもありません。値も、その時期を代表する数値をとっていて、期間と期間の間でも細かな変動をしています。あらかじめ、ご承知おきください。

 

2013/8

(罹患前)

2016/6

慢性期

2018/9

急性期

2019/11

回復前期

2021/9

回復後期

白血球

3900

4500

9800

6400

4900

顆粒球%

-

72.8

85.4

78.3

61.6

リンパ球%

-

19.2

10.1

14.6

28.5

単球%

-

6.7

1.0

5.3

6.6

ヘモグロビン

15.4

14.1

13.2

13.7

14.1

CRP

-

0.8

2.7

0.51

1.05

 

(参考)

免疫~感染症に対する生体防御|ワクチノーバ株式会社 | Vaxxinova Japan K.K.

単球は組織内に移るとマクロファージになる 漢方医学療法研究会 (e-kanpo.jp)

(話題5)食物あれこれ、健康食品について

 食物は、小腸から吸収され、肝臓であたらしいタンパクに合成されたり、逆に有害な物質は分解(代謝)されて、体内から除かれたりしますが、その際に酵素を必要とします。

 酵素とは、体内で行われるこういった化学変化を進めるうえで触媒としての働きを持つタンパク質を言い、消化酵素代謝酵素があります。違いが分かりにくいですが、寅三郎は、ある物質を最小単位にまで分解する働きを消化、ある物質から全く性質の違う別の物質を作り出す働きを代謝と整理しています。たとえば、唾液にはアミラーゼという消化酵素があります(もちろん膵臓にも)。この消化酵素の働きでデンプンが最終的にブドウ糖に分解され、小腸の腸管から吸収されます。ここまでが消化の働きです。その後、ブドウ糖はさらに分解されてATP(エネルギーの基となる物質)に変わります。ここの過程が代謝で、代謝酵素が使われます。

 そこで、問題になることが、代謝酵素が十分にないと、エネルギーを生み出すにも、あるいは有害物質を分解することも十分に行われないことになり、体に負担になるという点です。このとき、代謝酵素は消化酵素の代わりを務められるが、消化酵素代謝酵素の代わりは務められないということがあります(参考文献)。どういうことかといえば、消化酵素が不足すると代謝酵素が穴埋めし、結局は代謝酵素の不足をきたすということのようです。そうならないためには、ニンジンを摂取するときは、ニンジンの持つ消化酵素も一緒に体に入れることが重要になります。この際、消化酵素は熱に弱いという問題がありますから生での摂取が望ましいようです。

 子供の頃、生野菜は体の調子を整えるから、食べたほうがいいんだぞと親に教わったものですが、その理由は、参考文献から、酵素の働きが関係していたんだと理解した次第です。加工食品が店頭を飾ることが多い現代社会です。加工食品は確かに栄養はありますが、熱処理されているため、食品独自の消化酵素を失っています。このため、消化には体が本来持つ消化酵素を使わざるを得ません。その結果、代謝酵素不足を生じることがあり、体調不良を引き起こす引き金になるとも限りません。となれば、加工食品を食べる際にはできるだけ生野菜、果物も積極的に摂取する必要があると寅三郎は感じています。

 以下に、寅三郎が摂取している栄養食品等を参考までに示します。この組み合わせがいいかどうかは、個人の体質の違いなども考慮すれば、一概に当てはまるものではありませんが、一般に体によいと言われるものを列記してみました。

 このうち、ラクトフェリンについては、胃液で消化酵素ペプシンの働きで、ラクトフェリシンに変化し、抗菌効果がものすごいことになるらしいです。参考文献から拾うと、「ラクトフェリンが胃で分解されたのちにさらに強力な成分「ラクトフェリシン」に変化するのですが、細菌や真菌への抗菌作用がラクトフェリンに比べて数十倍から数百倍も高いという結果がでています。ラクトフェリンラクトフェリシンの違いは細菌などへのアプローチ方法になります。ラクトフェリンは細菌の増殖を抑制する働きがあり、ラクトフェリシンは細菌や真菌などの細胞膜を傷つけることで殺菌までおこなう働きがあります。」とのことです。それでは、胃でラクトフェリシンをつくらせればいいではないかとも思われますが、そう簡単な話でもなさそうで、参考文献では双方が必要だと結んでいます。ラクトフェリシンについては、2003年、2011年に論文紹介があるようですが、寅三郎は詳細を知りません。特に真菌に対する殺菌効果については、今後の進展を大いに期待したいところです。

 

品目

素材

寅三郎が狙っている効果

摂取開始時期

ニンジンジュース

食品

酵素の補充

今年11月~

発酵玄米胚芽粉

食品

酵素の補充

昨年~

ラクトフェリン

サプリ

カビから鉄を奪う作用(弱体化)

NK細胞を活性化

昨年~

プラズマ乳酸菌

サプリ

司令塔となるリンパ球を活性化

今年10月~

R1

サプリ

NK細胞を活性化

昨年3月~

生ショウガ

食品

(体温を上げ)免疫の働きを強める

今年9月~

クルミと緑茶の

組合せ

食品

炎症を抑える

今年~

(参考文献)

ラクトフェリシン(lactoferricin:LFcin)|用語集|腸内細菌学会 (bifidus-fund.jp)

ラクトフェリンとラクトフェリシン | ラクトフェリン効果口コミ研究所 (xn--hckp9e6b7ek7d.xyz)

2.酵素養学とは | NPO法人 日本酵素栄養学協会 (n-kouso.org)