自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

病に強い身体をつくるために必要なこととは?

 これまで、免疫の働きをメインに考えてきました。これは、この病(アスペルギルス)に立ち向かうには、やはり免疫が鍵を握ると考えたことによりますが、では、免疫を強めただけで問題が解決するかといえば、そう簡単な話でもなく、免疫が働きやすい環境を作ってやることが大事だということに気が付きました。

 これは、私たちの働く環境を考えればわかることです。会社、例えば清掃会社を例に考えてみましょう。面接で頭数が確保できた、研修施設を持っていて、社内研修もやった。配属先が決まり、それぞれの役割分担も明確になった。では、清掃能力を上げられるかといえばそう簡単な話でもない。たとえば残業時間がやたら多いとどうでしょうか。やってらんない。くたくたになって処理能力は当然落ちます。この点、人材にゆとりがあって、「お前、疲れたなら帰って休めよ。あとは〇〇にやらせるから」みたいな環境だと、処理能力が落ちることはありません。また、休憩時間があって、美味しいお茶とお菓子なんて出される会社だったら、頑張ろうという気になります。当然、体力、気力を充実させるだけの給与も必要でしょう。事務方のことも考える必要があります。たとえば事務のAさんが体調を崩して休んだとして、一時的にその方の仕事を残りの方が処理せざるを得ないといったことを考えると、二人分の仕事をしなくてはいけないことになる。それで忙しくなったからといって、給与を出すのが遅れたなんてことにでもなれば、それこそ処理能力が落ちることになりませんか。

 急な災害が起きて、清掃能力が大幅にダウンした場合を考えると、もっと深刻です。自力で立ち行かなくなったときに、では丸ごと事業を譲り渡すか、なんてなかなか考えないでしょう。そうとなれば、従業員だって解雇されるかもしれないし、そうでなくても待遇も悪くなることは考えられます。ではどうするか、外部から強力な応援部隊を依頼することで対処しようとします。その際に大事になってくるのは、受け入れ先でイニシャテイブをとることです。イニシャテイブを取って、どれだけの人数の応援部隊を必要とするかを決めて依頼する。全部を受け入れても対応しきれないからです。また、処理能力が回復したときには応援部隊にはすみやかに帰っていただかないといけない。いつまでも残っていただいたら、食事も提供しなくてはいけないし、正規社員と意見がぶつかったりして、以前の処理能力よりも落ちてしまうことになりかねません。

 長々とたとえ話をしましたが、こういった話の中に、実は健康を回復するヒントがあるように思います。それは、いくら免疫細胞がひとりで頑張ったところで、どうしようもないということです。体内環境を整えて、いつでも免疫細胞が働きやすい環境にしておかないといけない。

 そのためには、自分の健康は自分で守るといった心構えを持つことがまず大事です。医者任せでは病気は治りません。その意味で、医者は患者の応援団に過ぎないのであって、どんなに優秀であっても、医者が代わりに走り出すことはできない。患者自身が走り出さないことには何も始まらないということをまずは自覚することが重要です。

 つぎは、体のメンテです。体の中で代謝酵素が十分に使えるように、消化酵素は潤沢にしておかないといけない。とりわけ肝臓では多くの代謝が行われて様々な物質が作られます。その化学反応を促進するのが酵素です。しかも、消化酵素が不足をきたすと代謝酵素は代わりを務め、結果的に代謝不足を生じさせます。このように考えると、代謝不足に備えるには、消化酵素が不足をきたさないことが重要となります。加えて、代謝酵素は鉄を使うことがありますので、鉄の補充も考えないといけない。この点、もともと体内の鉄の管理は一定以上確保されているようです。また、鉄はそんなに体内に吸収されやすいものでもどうもなさそうです。そうなると、寅三郎がひそかに期待しているのが、ラクトフェリンです。鉄の管理を引き受けてくれるし、場合により、細菌(真菌)から鉄を奪い取って増殖を抑えることも期待されるからです。

 つぎに、大事なことが、栄養補給です。A. Marcosらの論文(2003)によれば「エネルギーや主要栄養素の摂取不足や特定の微量栄養素の欠乏による栄養不足は、免疫系を損ない、宿主保護の基本となる免疫機能を抑制します。最も一貫した異常は、細胞性免疫、補体系、貪食機能、サイトカイン産生、粘膜分泌抗体応答、および抗体親和性」に影響を与えると考えられます。胸腺の委縮にも関係するようです。そう考えると、三食きちんと食べて、よく寝て、ストレスを長く貯めない生活が望まれます。

 最後に、薬の効く仕組み、代謝に至るまでの過程が重要となります。薬が効きすぎても困るし、また、代謝されずに体内に残っても困るからです。この点を次回に少し敷衍して検討していきます。理解不足もあるかもしれませんが、お付き合いください。

(参考文献)

Marcos, A., Nova, E. & Montero, A. Changes in the immune system are conditioned by nutrition. Eur J Clin Nut 57, S66–S69 (2003).