自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

どういったタイミングで侵入するのか

(1)一般的説明

 アスペルギルス属のなかで、病気を引き起こすのはフミガーツスという種類であって、これが、体に侵入して罹患するとされます。この真菌は土壌や空中、穀物など私たちの周りに広く生息しています。多くのカビは湿度60%で発生し、80%で増殖するそうです。そう考えれば、カビにとって、肺の中は実に居心地の良い環境なのかもしれません。それにしても、健康な人間がかからないのは、防御機能が有効に働いているためと言われています。

 カビが侵入しようとすれば、咳は出るし、痰もでます。しかし、体が抵抗力を奪われているとか、体の防御機能が失われた状態のときにたまたまアスペルくんに出会うと確実にやられます。侵入を許してしまうわけです。軒を貸して、適当に相手してやっていた(咳と痰)ところが、気が付くといつの間にか母屋を取られていた(侵入)みたいなものです。

 

(2)寅三郎の場合

では、寅三郎はどういったタイミングで侵入を許したのか。寅三郎は、当時、自転車で転倒して、顔(鼻あたり)をすりむき、皮膚科で免疫抑制剤入りの軟膏を、よく効くからと鼻のあたりを塗るように処方されていました。その状態で大した準備もせずにエアコン掃除をやったのですが、その結果、カビは免疫をすり抜けたと考えています。

 一般にエアコン内でカビはよく繁殖することが知られています。台所や、風呂場など水回りの場所でも黒カビが繁殖します。なので、塩素系殺菌剤などで念入りに駆除することが勧められます。名古屋で生活を始めた際に、エアコンを新調して取り付けを依頼した際、若い女性の技術者でしたが、その方からこんな話を聞きました。取り外し、取り付け工事をしていて、訳のわからない咳に3か月近くも苦しんだことがある。原因もわからず、いつの間にか咳は収まったが、あるいはエアコンのカビを吸い込み、それを排出しようとして激しい咳がでたのかもしれないということでした。

 病で免疫抑制剤を処方されている方や抗がん剤の副作用で苦しんでおられる方などは防御機能が弱っています。とくに注意する必要があると感じています。

なぜ空洞で繁殖するのか。

(1)一般的説明

 アスペルギルスは肺の空洞内に菌球をつくることが知られています。菌球とは肺が結核などにかかって形成された空洞に、カビが入り込んで、そこの中で成長して菌糸塊をつくるものをいいます。おもに上葉肺尖部に形成されることが多く、「結核菌は偏性好気性菌(酸素がないと生きていけない菌)であるために肺の中でも酸素濃度の高い場所に生着しやすい」(参照文献)ということが理由としてあるようです。真菌も結核菌と同様に、多くの酸素を必要とするために上葉肺尖部(肺の上側)に居座るのではないか。これに対し、細菌は好気性のものもあるとしても、結核菌や真菌ほどに酸素を多く必要としないのではないか。それよりは重要な環境上の生存戦略があって、それゆえに上葉肺尖部以外のところを侵すのではないか、そんな気がしています。

 空洞内に形成された菌球はアスペルギローマと呼ばれて、大変に治療が難しい。根治療法としては肺の塊ごと切除するしかないそうです。ただ、肺と肺を包んでいる胸膜との癒着が大きければ、癒着をいったんはがしてから肺組織を切り取ることになりますが、剝がすときに大量出血することから、外科的に尻込みされる場合が多いことになります。

 それではということで、外から長い針を空洞に刺して、そこに抗真菌薬(アンビゾーム)を注入するやり方が試みられています。ただ、患部が深いと難しいようで、肺のあたりは血管が張り巡らされていることから、血管を傷つけないように進む必要があり、難しい作業になるとみられます。

 これと同様の効果を、手術によって達成する方法も試みられています。空洞内の菌球だけを直接に取り除く手術です。空洞切開菌球除去術といわれます。参考文献から一部を引用すると、「肺切除は根治性のある確実な治療法であるがアスペルギローマを有する空洞性病変は胸壁,葉間,肺門への浸潤傾向が強く,切除範囲が予想より過大」になりがちであり、それであれば、直接、空洞を切開し、なかの菌球のみを取り除けばいいのではないかといったことのようです。空洞はそのまま残します。「空洞の遺残は再びアスペルギルスの腐生を来しやすい為(自検再発率 42.9%)充填閉鎖が理想であるが,多数の気管支孔の開存,極度に肥厚・硬化した壁, 複雑な形状等本疾患の空洞の特質からその完全閉鎖は困難である」ということがその理由です。ただ、再発したら、また取り除いてもらえばいいと考えると、ずいぶん楽な気になれます。

 それなら、気管支から空洞まで誘導し、抗真菌薬を直接入れ込んでいただくことはやっていただけないかと先生にご相談したことがあります。そうしたところ、先の細い気管支鏡を使って誘導し、そこに抗真菌薬を流し込む方法があることがわかりました。聞いてみるもんです。しかし、これも結局は空振りに終わりました。この方法に実績のある全国のあちこちの病院に当たっていただきましたが、いずれもよい返事はいただけませんでした。おそらくはCT画像などをみながら、少しずつ先へ進めるのでしょう。被ばく量が大きくなることも考えると、あまりよい選択ではないということかもしれません。

 以上の外科的治療ができなければ、内科的治療になります。その場合、ブイフェンドが第一選択とされます。高い薬ですが、やむをえません。

 

 (2)寅三郎の場合

 寅三郎は、いろいろに考えて外科的治療が難しいとわかってブイフェンドしかないかなあという感触に固まってきていた頃に、二度目の入院を経験しました。細菌感染による肺炎が原因でした。このタイミングでブイフェンドに切り替えました。血管から離れた組織までどうせ薬が届くはずはないとあきらめていたのですが、思いがけず、8か月後のCT検査で、カビの詰まった空洞の中が空っぽになりました。理由はわかりません。

 では、袋の中のカビはどうしたか。

実は、2019年頃から、翌2020年にかけて血痰に交じって茶色い塊が出ることがたびたびありました。大きいものは直径4mm近く、大小入り混じって、5日ほど毎日のように続き、しばらくしてまた出始めるといったことが続きました。入院していた2019年3月に、この茶色い塊に不信を抱き、主治医の先生に調べていただいたところカビであることが判明しました。

 この茶色い塊がどれくらい排出されれば空洞の中が空っぽになるか、簡単に見積もってみました。空洞の容積をおおまかに4/3πRで見積ります。空洞の直径はほぼ約2㎝(半径1㎝)でしたから、空洞内の容積は約4㎤という見積になります。一方で、排出した塊はだいたいが直径0.4cm(半径0.2cm)前後で、体積は0.032㎤。なので、これくらいの塊がおよそ100個ほども排出されれば空洞内の菌球はほぼ出尽くすことになります。毎日のように、大小おりまぜて、半年にもわたって出続けていたのですから、通算すればそれくらいの量にはなったのでしょう。果たしてCT画像で確認すれば袋の中は空っぽに。思わず、主治医の先生に「ほんとですか」と聞き返しました。アスペルくんに勝ったと思いました。この日から病名がアスペルギローマから、アスペルギルス肺症へと変わりました。空洞が空洞に戻った瞬間でした。

(参考)

日本呼吸器学会雑誌39巻12号 (jrs.or.jp)

つねぴーBLOG@内科専攻医(はてなBLOG)

(話題3)アスペルギルス菌の状態を我々はどこで認識できるか(血液検査の話題)

寅三郎がこの病に罹って、病院で血液検査を受けたときに、CRPは常に測定しています。その一方で、βDグルカンや、アスペルギルス抗原(ELISA法)の値をたまに測定される場合があります。これらの結果は、CRPは1時間ほどで知らされますが、他の二つは結果が出るまでに2~4日程度は要するようです。

 このうち、アスペルギルス抗原については、どうもよくわからない。完治している患者さんでも抗原が+の方もおられる反面、発症していても抗原が―の方もおられるようです。こういった訳の分からない基準を、病院の先生方はどういった理由で見ておられるのか、患者としても、気になるところであり、一応調べてみることにしました。

 ELISA法とは、アスペルギルス肺症の原因となる物質(抗原)の量を測る技術で、抗原と抗体を結合させて、抗原抗体反応を起こし、そこに含まれる抗原の量を測ることのようです。検査対象(抗原)に酵素標識をした抗体を加えて、抗原抗体反応を引き起こさせ、その反応の際に使われる酵素の残量から、抗原の量を推定するのではないかと寅三郎は勝手に推測していますが、推測の域を出ません。名古屋にいるときに、病巣に生理的食塩水を流して、その水を採取して診断することを受けたように記憶していますが、今思えば、おそらく、この方式ではなかったかと考えています。

 他方で、ではなぜ、アスペルギルスの抗体量を直接に測ることをしないのか、抗体量をみることで、抗原の量を推測することができるのではないかといった素朴な疑問があります。参考文献によれば「血清アスペルギルス沈降抗体検査の有用性については以前より認識されており,近年我々も、CPA(慢性肺アスペルギルス症;寅三郎追記)患者における血清アスペルギルス沈降抗体検査の陽性率が,アスペルギルス抗原のそれより優れていることを報告した。しかし我が国において本検査はいまだ 保険適応でなく,その陽性判定基準や検査精度について 本邦のデータは少ない」との指摘がなされています。理由はわかりませんが、今現在も、抗体検査は保険適用に至っていないのではないでしょうか。

 以上を踏まえて、抗原検査についての疑問も持っています。抗原検査は、血清中の抗原を調べるものですが、血管外にある組織に巣くっている、アスペルギローマの抗原はあるいはカバーしていないのではないかという疑問です。第二に、血清中に限ったこととして、判定の精度がどれくらいのものかという疑問です。完治しているのに抗原が+とは、偽陽性が一定程度含まれるということなのか、一度、ご専門の方に伺ってみたい思いがあります。

 ちなみに、正常範囲は、0.5未満を陰性、0.5以上を陽性としているようです。

(参考文献)

血清アスペルギルス沈降抗体検査症例の臨床的検討、安藤陽一郎ほか、日呼吸誌1(1)、2012.

なぜCRPの数値が上がるのか(炎症反応について)

(1)一般的説明

「なぜ痰がでるか」で、CRPは後処理の過程と整理しました。単球から変化したマクロファージが細菌と出会い、これを貪食した際に、細菌の形を記憶し、これをリンパ球に受け渡して(抗原提示)B細胞に抗体(免疫グロブリン)をつくらせる、と同時に、後処理として、サイトカインを出して、肝臓に働きかけ、CRPをつくらせ、これを細菌の細胞膜に付着させることで、貪食細胞が掃除する際の目印になると整理しました。

 しかし、その後、参考文献に接して読み進むうちに、大体は正しいが、少しだけ違うんじゃないか。CRPは、目印を提示するといったような働き(オプソニン効果)は持ち合わせていないのではないかと思い至りました。「ちなみにCRPはオプソニン作用を持っていないことを付け加えておきましょう。CRPがオプソニン作用を持っていれば、補体そのものになってしまいますね。」(Dr.松本のブログ)。

 改めて整理すると、最初は、貪食細胞(マクロファージ)が細菌を丸呑みし、リンパ球に抗原を提示して、抗体を盛んに作らせる。その一方で、肝臓にCRPをつくれと促し、作られたCRPが、細菌を退治するため、血清内に放出されて、抗原抗体反応をサポートする。後処理の過程については、別の参考文献では「マクロファージは、残った壊死細胞や異物を貪食作用で処理する。リンパ球は、病原を除去するために働く。」、つまりは、CRPではなく、傷害細胞自らが発するSOSのサインを受けてマクロファージが後処理を行うということを述べています。

 ちなみに、無理にCRPを下げようと思えば、免疫細胞がサイトカインを出さないように仕向ければいいわけです。この働きを阻害するのが、ステロイドホルモンで、これを大量投与すれば、CRPは上がらないことになります。結果、炎症反応は起こらず、CRPは低いまま。その後の抗原抗体反応は進まず、細菌が野放しとなってしまう。寅三郎が、この病にかかったきっかけは、免疫が働かなかったために、カビを受け入れてしまったことが原因でした。その引き金となったのは、顔を傷害した際に、医師から処方された治療薬(免疫抑制剤)だったと思っています。

 一方、CRPは細菌感染では高い値を示すが、ウィルス感染では値があまり上昇しないといわれています。理由はウィルスと細菌の構造の違いにあると考えられているようです。前者は細胞膜がないからCRPが付着できない。なるほどと思います。ただ、ウィルスが細胞を乗っ取って中に入り込んだ段階を考えると、マクロファージからではなく、今度は、傷害細胞自らがSOSのサインを出し、肝臓でCRPがつくられる過程が働くことも想像に難くありません。その場合は一定程度増えるのではないか。理由はともあれ、高熱を出して病院にかかったときに、CRPが低いものの、インフルエンザ検査をしてみたら、陽性だったということがよくあるわけです。

 CRPの標準ですが、0.5以下を目安とするところや、0.3以下を目安とするところがあります。病院によっては0.1以下としているところもあるようです。基準がこれだけ違う理由は、これも推測の域を出ませんが、外国人と日本人では体つきも、肝臓の強さも違うと思うので、このあたりの違いもあるのではと想像しています。いずれにせよ、他人と数値比較して、値が同じだから体調も同じはずだといった使い方は意味がなく、自分のCRPが今回、この程度に上がった(下がった)から、どうこうといった使い方が推奨されるのでしょう。

   では、病院で検査を受けたところ、CRPが少しだけ高い(たとえば3.0とか)といわれて、抗生物質を出しましょうということになったらどうするか。悩ましいところですが、そのときに、レントゲン検査などで肺炎の炎症所見があるかどうかがポイントになると思います。どこかの臓器に炎症があるかもしれないということはありますが、それであれば、どこの臓器が異常を訴えているかはCRP以外の要素でも想像はできるはずです。なので、もし、レントゲンで炎症所見がないのであれば、先生に少し様子をみさせていただきたいとご相談してみることも大事なことではないか、むやみに抗菌剤を体に入れると、体に負担をかけますし、免疫にとっても必ずしもいいことではありません。寅三郎の経験では、医師は3.0くらいでは抗菌剤を処方してくれませんでした。薬なしでも免疫の働きで自然に回復したことがありました。

  

(2)寅三郎の場合

 寅三郎は、平熱の状態であっても、CRPは0.5~0.8程度の高値が続いています。なんとなく体がだるいことが多いです。最近、一度だけ0.3を切って大喜びしたのですが、次の診察日にはまたもとに戻って高値安定。

 CRPの微増安定の原因は、寅三郎にはわかりませんが、CRPが高いということは、細菌の罹患はないにしても、どこかの組織が壊れていて、その影響を示しているのでないかと推測しています。対策になるかどうかわかりませんが、栄養状態を改善する必要を感じ、また、腸活にも取り組んでいます。

 具体的には、毎朝タンパク質を取ること、クルミと皮つきピーナッツ、玄米の胚芽粉、ぬか漬けのニンジン(オリーブオイルをまぶして)などです。βカロテンは、脂溶性のため、少しでも消化吸収の効果を上げたいと思ってのことです。ただ、薬との飲み合わせに、薬の効果を強めてしまうことがあるとか、注意が必要なこともありそうです(参考文献)。

※このブログは、アスペルに苦しんだ患者の立場から、それを克服するためには、免疫反応の全体像を理解することが、ぜひとも必要だとの思いで、書きはじめたものです。医療関係者の方の目にとまって、適切なアドバイスがいただけたら、すばらしいことなのですが、今のところは、自分で頑張るしかありません。このことから、今回のように新しい知見で内容の一部に修正が生じる場合がありますが、勇気をもって修正しようと思っています。よろしくお付き合いください。

CRPが少しだけ高いとなったときに抗生物質をもらった方がいいかどうかについて寅三郎の意見を追記しました(R3/12/4)

 

(参考)

 CRPとは何か | 医学博士 Dr.松本のブログ (matsumoto25.net)

 炎症の原因・経過 (kenkou-jouhou.com)

 免疫グロブリンとは - コトバンク (kotobank.jp)

サプリメントの悪いみ合わせはある?おすすめや医薬品との関係についても解説! | サプリポート by スタルジー (stalgie.co.jp)

なぜ喀血するのか、血痰が出るのか

―血痰の血液の出所はどこなのか―

(1)一般的説明

 実は、この項目だけは書きたくなかった、絶対に書きたくなかった。冒頭にいきなりですみませんが、寅三郎の偽らざる本音です。この病と無理やり付き合わされて8年、つい最近まで血痰が続いていましたから。今でこそ、血痰イベントはありませんが、時折、その時の状況が脳裏にフラッシュバックすることがあります。とはいえ、記憶を封印していても先に進めない。こんな情報でも、血痰に悩んでおられる方にとって、なにがしかの参考になるかもしれない。そう思って、今一度、血痰の記憶と向き合うことにしました。

 寅三郎は、8年前にこの病にかかり、肺炎でも起こしたかと考えて、近所の病院にかかりました。医師の診断は膿胸。意外な病名でした。右肺の上半分がほぼ真っ白。抗菌剤を2週間も飲んだのに効かない。医師も首をかしげていました。「肺が腐っている」とまで言われて、寅三郎はショックを隠し切れませんでした。患者にこんなことを言う医師っていったい?「腐っているって?俺の肺が?腐っているってどういう意味だ?」。自問自答を繰り返しましたが、答えが得られるはずもありません。この後、体調はやや持ち直しましたが、体調不良はかわらず。黄色い痰は相変わらず続いていたように思います。職場の階段を昇るときも、これまでとは違って息が切れました。同僚にいとも簡単に追い越されていく自分がみじめでしかたがありませんでした。

 罹患して半年後、仕事の関係で名古屋に転居しました。そこではじめてアスペルギローマ(肺の上葉になにかの原因で空洞ができていて、そこにカビが入り込んでいる)の診断を受けました。肺の上葉を侵すのは、だいたい結核菌か、誤嚥性だそうです。細菌感染は上葉をめったに侵さない。これに対し、真菌は上葉に入り込むということなのでしょう。寅三郎の肺に空いた空洞(上葉)も、詳細は不明ですが、過去に罹患した?陳旧性結核で空いたものかもしれません。イトラコナゾールの処方を受けました。ただ、維持療法でしかなく、医師からは、この後、徐々に悪化して10年もしたら鼻から酸素チューブを差し込んで、酸素ボンベを引いて歩く生活になるかもしれないといわれました(その10年がまもなく訪れます。徐々に悪化した現象は、その後止まり、カビは消え、いまは、症状は落ち着いています。)

 名古屋に移って早々に、職場で喀血が一度ありました。洗面所に駆け込むと鮮血がパット広がりました。この時はさすがに恐れましたが、それ一度きりで、名古屋で暮らした2年間はもっとも体が安定した時期でした。名古屋の坂の多い道をママチャリで所狭しと乗り回しました。ただ、未明から早朝の時間帯に、決まって桃色の痰が少し。この頃に、たまたまドックでお世話になった病院の外科医に、思い切って、カビのことをお話ししてみました。すると、これくらいなら私なら、切ってなおしてあげれると言ってくださいましたが、まだ、胸膜の癒着が小さく、膜から剥がしても、血管を痛めて大量出血するといったリスクがないと判断されてのことだったのでしょう。

 5年前(2016年)に田舎に戻ってからは、つい最近まで血痰が続きました。枕元にテイッシュボックスを置いて寝る生活が続きました。

 3年前(2018年)には再び喀血するようになりました。この喀血が曲者で、大量喀血したときは命の危険を伴うので、すぐに救急車を依頼して入院するように言われました。また、大量の血液が気管に流れ込まないように注意することを示唆されました。窒息の危険があるためです。常時は止血剤を処方されていました。このときは、もう長くないなと思いました。せめて、古稀(古来稀なり)を経験してからにしたいものだと思いました。この頃は、右肺の上葉が真っ白で、βDグルカンは220にも上がっていました。

 血痰は、文字通り、痰に血が混じる現象です。

痰については、「なぜ痰がでるか」で、前提として議論を試みました。白血球が増えて、免疫細胞が細菌の駆逐を進めた後に、現場に残ったマクロファージが、肝臓に「目印を作りなさい」という情報を出します。この情報を受けて、肝臓では、必死にCRP製造に励んだ結果、細菌の表面にくっつけられたCRPを目印に、現場のマクロファージが、傷害を受けた細胞もろともに飲み込んで消化してしまうといったイメージをお伝えしました。

 血痰は、その痰に血が混じることを指します。では、どの段階で血が混じるんだろうと考えると、これがまったく想像もつかない。真菌が正常細胞を傷害したとき?しかし、正常細胞に血が通っていなければ、一緒に血が流れるということもないんではないか、そんなことをつらつら考えてきました。なんで血痰がでるのか、これまでも折に触れて先生に聞いてみたことがありましたが、納得のいく回答はなかなか得られませんでした。

 ところが、今年の10月頃になって、ある論文がヒントを与えてくれました。それは、カビはタンパク質分解酵素のひとつであるエラスターゼを排出するということを記していました。このことは、論文の本旨ではなく、意図はその先にありましたが、それはさておいても、よいヒントになりました。血管も組織もすべてタンパク質でできています。そうであれば、カビがタンパク質分解酵素を出して、組織を溶かして自分の栄養に取り込んで いると考えても不思議ではありません。

 では、この際に、赤血球(ヘモグロビン)が狙われるとしたらどうでしょうか。ヘモグロビンは鉄と結合して赤色を示します。鉄は、「(話題)免疫でコントロールできているかどうかを、時系列で把握できないか。」でも議論しましたが、細菌にとっても生きるために大事な構成要素です。この鉄(Fe)を奪い取ろうとした結果が、痰に血が混じる原因として表れているのではないか、想像の域を出ませんが、寅三郎はいまはそのように考えています。

 ところで、カビもまた生物です。ヒトに危害を及ぼすために侵入したわけではありません。カビに悪気はない。生存戦略があって、快適な環境にあるヒトの肺に入り込んだ結果ということが理解できました。

 それにしても、断りもなくヒトの空洞に入り込むとは。ヒトが居座れば不退去罪ということもありますが、居座ったカビは、故意がないから、不退去罪で検察に告訴するわけにもいきません。ただ、あたりを壊し放題に壊されて、損害賠償を請求したいくらいの気持ちです。民事賠償も空振りですが・・・

 

(2)寅三郎の場合

 なぜ、血痰イベントが消滅したのか。これには、カビの総量が減少したことと、体の免疫が上がって、免疫細胞による駆逐が進んだことがあると考えています。体の栄養状態がよくなったこともあります。

 カビの総量が減少した理由ははっきり言ってよくわかりません。唯一、この頃に始めていたこととして、藁にもすがる思いで飲み始めた、チャコール(活性炭)療法がありました。先生に伺うと、活性炭は毒素を除去(吸着)する目的で、医療現場で使われることがあるが、カビに効果があるかどうかははっきり言ってよくわからないとの返事でした。体に悪くないのであれば、悪あがきついでにやってみようと始めたことでした。この療法が奏功したかどうかの判断は、今はペンデイングしておきますが、とにかく、この頃にカビの総量は著しく減少し、βDグルカンの値は6まで低下しました。

 免疫の向上を直截に表す量を知りませんが、「(話題)免疫でコントロールできているかどうかを、時系列で把握できないか。」でも議論した、ヘモグロビン量をその基準として考えることをすれば、最近はヘモグロビン量が大きく改善してきています。免疫の力が上がってきていると考えています。これに歩調を合わせるように、血痰も大きく減少しました。

 細菌から鉄を奪い取って、真菌の勢力を弱める戦法は、実は一年前から始めていて、ラクトフェリンを摂取することです。しかし、市販のヨーグルトで摂ったとしても一日100mgほどにしかなりません。最低、150mg以上を毎日摂取する必要があるともいわれていて、この程度の量で簡単に効果を判断することもできません。

(参考)

トータルヘルスサイト » チャコール(活性炭)療法 (kenkou-8.org)

なぜ痰がでるか

―咳、発熱、痰、だるさといった一連の流れに着目しながら―

(1)一般的説明                                                                                                                       痰は、細菌や真菌の感染の場合を考えてみると、おおまかには咳→発熱→痰→だるさ→回復といったような一つの流れの中に位置付けられるのではないかと、漠然と感じてきました。経験上のことと合致しているからです。もちろん、これらは同時並行的に起きる場合もあります。ただ、少なくとも、呼吸器系への細菌感染に限って言えば、だるさが先にあって、痰がでるといった流れはなかなか想定しにくい。自律神経の乱れとか、あるいは別の臓器がやられれば、そういったこともあるかもしれませんが。このような流れが、免疫の働きからみたときに、どのように説明されるのかを考えてみたいと思います。

 咳→発熱→痰→だるさ→回復といった流れについて考えたときに、まず、「咳」の段階とは気道粘膜が細菌などによって刺激を受けたときに、その刺激が迷走神経(副交感神経)に伝わり、呼吸筋を刺激して、反射的に肺の空気を送り出して、細菌を外に追い出すことで解決を図ろうとします。まずは、外敵を追い出すことで解決を図ろうとするわけです。

 咳の段階を超えて、細菌が組織を傷害する段階になれば、もう追い出しでは効かないことになる。それが「発熱」のステージです。細菌が入り込んだ時に、そういった細菌と最初に出会いを果たすのが好中球や単球です。とくに単球は血管から各種臓器にも入り込んで、マクロファージとなって細菌を丸ごと飲み込み、エラスターゼなどの消化酵素によって細菌を消化して退治することを行います。この細菌と戦っているといった情報は、免疫細胞の働きをよくするために、脳の視床下部に伝えられ、痛みを感じる物質(プロスタグランジン)が作られたり、温熱中枢が刺激されることで熱を上げたりということが行われます。ちなみに、このプロスタグランジンをつくる酵素の働きを阻害すればプロスタグランジンは作られず、発熱や痛みの症状が抑えられることになります。ステロイド剤です。ただ、ステロイド剤を使えば、免疫反応は進まないため、治りがその分遅れることになります。

 次に「痰」のステージですが、単球はマクロファージとなって、自らも細菌を丸呑みしたりもしますが、リンパ球に敵の情報を伝えることもします(抗原提示)。この情報を受けて、リンパ球は抗体を作って、細菌を羽交い絞めにしたり、免疫細胞に食べさせたりして撲滅します。

 この時に、単球のもう一つの重要な働きが、サイトカインという生理活性物質を出して、肝臓でCRPをつくらせることです。つくられたCRPは血清内に放出され、細菌の細胞膜に付着します。そして抗原抗体反応を活性化します。つまり、細菌の破壊が進むわけです。また、CRPは傷害細胞にも付着するようです。参考文献から一部を引用すれば、CRPは「生きている無傷の細胞膜とは結合しないことである。たとえば、無傷の赤血球には結合しないが、赤血球を」酵素処理をして加水分解をしておけば、傷害赤血球はCRPと結合するようになるといった文献があります。ウサギの実験から、心筋梗塞の壊死組織や、炎症部位にCRPが沈着していたとのことです。

 こういった、傷害細胞や細菌の死骸、マクロファージの死骸などが免疫細胞によって貪食され、免疫細胞が持つ粘液とともに外に排出されたものが痰と理解しています。

 このため、白血球が多くなったけれども、まだCRPの値が低いということであれば、最盛期といえますし、白血球が平常時の数値に戻ったけれども、相変わらずCRPの値が高いといったような場合は、炎症の回復期もしくは慢性期と考えられます。

 また、熱と痰との関連でいえば、熱は出ないが痰が出るというときは、痰が出る以上、CRPもある程度は作られているはずです。当然、CRPも一定程度高い値を示すでしょうし、その状態が長く続いているようなら、損傷組織を原因とする慢性の炎症が起きている可能性もあります。これに対し、これまで熱が出ていなかったのに、新たに熱が出たということになれば、今度は損傷組織を理由とするものではなく、新たな細菌感染の可能性がでてきて、いずれジワリとCRPが上昇していくことは想定できるし、痰も増えてくると心構えができます。

   いずれにしても、我々患者は、体調が変化したときは、この各段階を意識して、流れの中で、いまどの段階にあるのか、そして次はどういったことが起きる可能性があるかを想定して生活することが大事だと考えています。

 

(2)寅三郎の場合

感染と回復の流れについて、寅三郎の痰の状態については、「症状の経過と現状」に詳しく触れましたので、こちらをご覧いただければと思います。ここからは、漢方薬の話を少しご紹介します。

 痰が出るのは、細菌や真菌感染のいわば後処理ということを考えれば、体がこういったもの死骸を体内に残すことを嫌がって出す反応であり、これが体内に残っている限りで体のだるさや不調を感じるのであれば、なるべく早く外に出したいと思います。ただ、ここにこだわることは、感染処理を考えたときに、優先順序は高くないように感じます。

 寅三郎は、先生に頼んで清肺湯エキス剤を処方していただいたことがあります。清肺湯の「清肺」には、肺の熱を冷ますという意味があるそうです。具体的には、気道を潤す粘液の分泌を促し、気管支の線毛運動を活性化することで、痰や異物を排出しやすくする効果があるとのことです。ただ、エキス剤は生薬の状態で処方されないため、「精油成分」が飛んでしまって薬効が半減するとも言われます。

 清肺湯という選択肢のほかに、体力を上げることで、痰を出しやすくするように持っていければいいのではと寅三郎は考え、内科医の資格も併せ持つ、漢方の先生に診ていただいたこともあります。脈をみたり、舌を見せたりして、様々に体の状態を見ていただき、十全大補湯がよいだろうと処方いただきました。小分けの袋にいただいたものを薬缶で煮だしてのむのですが、体力を補うのに効果があったように感じました。この病、ブイフェンドだけで治すには限界も感じています。栄養状態、免疫力の向上など全体にパワーを上げていく必要を感じています。その意味では、漢方治療併用も有効な手段の一つに思えます。

※この項目は、CRPがオプソニン作用を有しないという新たな知見を得て、「痰のステージ」の一部書き換えを行いました。CRPが傷害組織にも付着することに着目すれば、本当にそうなのか、まだ十分に理解できないところもありますが、疑問のままに置いておき、いずれ理解にいたるときを待ちたいと思っています。

(参考)

 C-反応性蛋白(CRP)のリガンド結合性のクロマトグラフィー的検討、岸田卓也ほか、炎症、9巻5号、369-374、1989.

  CRPとは何か | 医学博士 Dr.松本のブログ (matsumoto25.net)

                                                                         

    

(話題2) 気温、気圧とリンパ球数の対応(自律神経の働きをみてみた)

 免疫細胞は、体温が高いときに活発に働くということを受けて、では、気温が高いとリンパ球がどう働くか、興味があって調べてみました。

福田先生(外科医)と安保先生(新潟大学名誉教授)との共同研究の成果として、高気圧のときには交感神経が優位に働いて顆粒球(の比率)が増え、低気圧のときには副交感神経が優位に働いてリンパ球(の比率)が増えるということが言われています。副交感神経が優位に働くと、副交感神経の末端からアセチルコリンが放出され、これとリンパ球が特異的に結合して増えるといったことのようです。

 そうであれば、さっそく寅三郎も試してみようと、まず、データ間の相関をとってみました。その結果、リンパ球(数)と海面気圧との間で弱いながら負相関の結果が得られ、また、平均気温との間では正相関が得られました。このことは、気圧が高(低)ければ、リンパ球数が少なく(多く)、また、気温が高(低)ければ、リンパ球数も多く(少なく)なるということを示唆しています。おおむね理論どおりの結果が得られました。

  Lymph(数)↓ Lymph% 海面気圧 平均気温
Lymph(数) 1      
Lymph% 0.701397359 1    
海面気圧 -0.17259727 -0.036431 1  
平均気温 0.343226176 0.2198871 -0.208779 1

 

 つぎに、両データの対比をみるために、無次元化してグラフで眺めてみることにしました。負相関の関係にあるので、逆の対応がみられると思いきや、あまり明瞭ではありません。もしかして、気圧の変化とリンパ球数の反応との間に時間差があるのかもしれません。そうであれば、一方の時間をずらして相関を取った場合に(ラグ相関)、両者の間に負相関が認められるのかもしれません。しかし、データは等間隔で得られているわけでもありません。時間的にトビトビのデータです。残念ながらその辺が限界です。

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 つぎに、日平均気温とリンパ球数との対応もみてみました。こちらは、気温が高いときにはリンパ球数も多く、逆に気温が低いときにはリンパ球数が少ないといったことで、正相関の結果とも比較的よい対応が得られました。

 

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 寒いと交感神経が優位に働いて、血管を収縮する方向に働きますが、副交感神経は休みます。このため、末端から出るアセチルコリンが少なく、リンパ球数が少ない方向に誘導する。逆に暖かいときは副交感神経が優位に働いて、血管を広げる方向に働き、リンパ球も多く放出されるといった文脈で理解できるのではという気がしています。そう考えると、夏にインフルエンザに罹患することが少なく、冬に多くなるのは、リンパ球数が減って、体の防御が手薄になるからでしょうか。

 なお、グラフが自動的に作られるため、日にちとは完全に一致していません。