自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

(話題)免疫でコントロールできているかどうかを、時系列で把握できないか。

 この病と8年もの間、いやおうなしに付き合わされたおかげで、寅三郎は3つの疑問を生じました。

一つは、免疫の反応に対する疑問です。寅三郎の場合、発病初期に咳や痰、発熱があって、肺炎症状を起こしましたが(おそらくカビの影響)、その後は、発熱することもなく経過しました。その半年後に、アスペルの診断を受け、処方されたイトリコナゾールのおかげもあったのでしょう、体のだるさも、落ち着いた感じでした。いわば、急性期から、安定期(以前にアップした、「症状の経過と現状」をご覧ください)へ移行したわけで、体調的にもいったん安定した時期にはいりました。これは、カビが、免疫細胞の影響を避けてどこかへ避難したためではないか、その場合、免疫細胞は、犯人を積極的に探し出してでも駆逐するといった動きをしなくなるのではないかといった素朴な疑問を持ちました。

 二つ目は、カビが体の中のどこに潜んでいるかを客観的に見る手段がないということです。たとえば、ガン検査でPET検査があります。がん細胞は活発に増殖しますが、その際、大量の栄養素を必要とし、正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込むといわれています。この性質を利用して、ごく微量の放射線を発するよう合成されたブドウ糖グルコース)を使って、ブドウ糖を光らせておいて(いわば目印をつけて)、それを取り込んだガン細胞がどこにあるかをCTでみるやりかたがPET検査です。寅三郎も昔やったことがありますが、もともと脳はかなりブドウ糖を消費する場所のようで、全体が緑色に光ったような記憶がありますが、そういった定常的な場所のほかにブドウ糖が多く集積したところは緑色に光ります。こういった仕組みをカビでも利用することができないだろうかといった疑問です。

 三つ目は、そういった局在的な分布がわからないにしても、カビが血液中に存在する限りで、私たちはβDグルカンの血中濃度を測ることで、カビの総量をみることができます。この値の変化を免疫反応との対比で、一対一にみることができないものかといった疑問です。別の言い方をすれば、免疫は、役者が大勢いて、それぞれがそれぞれに持ち場をこなして成り立っています。しかし、それだと、役者が多すぎて、カビとの関係をみるのに対応関係が明確につかめません。この点、役者の一人の行動を追いかけることで、カビの増減との対比を見つけられればそれに越したことはありません。そういった指標がはたしてあるかといった疑問です。

 一つ目、二つ目の疑問は、判断を裏付ける情報が不足しているため、一旦、棚上げしておき、ここでは三つ目の疑問について、議論を先に進めたいと考えます。

 以前に「そもそも、カビって?」といった素材を上げて、議論したことがあります。そこで、議論したことは、ヒトの細胞とカビの細胞(真菌)はとても似たものであること、ヒトもカビも体を構成する重要な素材として、鉄(Fe)を使うことを参考文献から紹介しました。おそらくそこには、酸素を利用したいという戦略が共通に備わっているのだと考えますが、この鉄(鉄イオン)をカビ(真菌)から奪い去ることができれば、カビを減らすことができることになります。

 その一方で、鉄はヒトの免疫細胞にとっても欠かせないものです。免疫の主役であるリンパ球は骨髄のなかで万能細胞から作られます。ここで作られた未熟なリンパ球T細胞がやがて様々な働きをするリンパ球に分化して、それぞれの役割を果たすようになる(いわば一人前、免疫だから、一免疫前?になる)わけですが、分化する際に、関わるのが胸腺(胸の真ん中の硬い骨、胸骨の下にある)だといわれています。この胸腺が、鉄の不足によって委縮するという研究(Bowlus, C. L. (2003). The role of iron in T cell development and autoimmunity. Autoimmunity reviews, 2(2), 73-78.)があるようです。寅三郎は読んでいませんが、要約の一部を引用すれば「鉄は、免疫系の細胞を含むすべての細胞の増殖のための重要な金属である。鉄の不足は、免疫の液性および細胞性の両方にいくつかの欠陥を引き起こす。最も深刻な変化の一つは、末梢T細胞の減少および胸腺の萎縮である。」と紹介されています。

 ということは、鉄の不足を追いかければ、カビの増減を追いかけるうえで何らかの目安を得ることができるのではないか、ただ、手元には来院した際の血液検査の結果しかありません。そこで、寅三郎は、ともに鉄を利用する、ヘモグロビン(これは鉄とタンパク質の結合物です)とリンパ球数の対応に着目してみました。胸腺でのT細胞の分化が進まなければ、血液中に出動するリンパ球数にもなんらかの影響がみられるのではないかと考えたのです(下グラフ)。ここで、リンパ球数は、血液検査の結果で、白血球数(WBC)×Lymph(%)として算出して用いました。白血球の総数が少なければ、そのなかで占めるリンパ球の比率がいくら大きくても、リンパ球の数の増加はたかが知れているからです。グラフの左側目盛りはリンパ球数を、右側目盛りはヘモグロビン量を指します。このグラフに、カビの数値としてβDグルカンの値が急に大きくなった期間(50程度→150~200超え(該当期間)→6に変化)を付け加えました。すると、面白い対応が二つ浮かび上がりました。 

 グラフの赤矢印をご覧ください。慢性期、急性期、回復期をそれぞれ、グラフ内に示しました。一つは、βDグルカンの値の変動についてです。慢性期にはいって、寅三郎の体調はしばらくの間は安定していました。βDグルカンの値は50程度と低値でした。その後、急性期にはいって、喀血を経験したりしましたが、その頃はβDグルカンは200以上にも高くなりました。その後、原因はわかりませんが、回復期にはいって、6程度まで低くなって現在に至ります。この傾向が、ヘモグロビンとリンパ球の推移ときれいに一致していることがわかります。

 二つ目は、寅三郎は、2019年3月頃と10月頃、2021の3月頃と8月頃に入院を経験しています。とくに2019年3月と2021年3月の入院は、生死をさまよう厳しいものでした。この4つのいわば入院イベント時に共通していることが、リンパ球数の減少(オレンジ色のグラフの下がったところ)とヘモグロビンの減少ともに極小値を示しているという点です(但し2019年10月頃の入院時は明瞭でない)。前提として、慢性期と急性期はカビの影響、回復期は細菌の影響がより顕著に表れているということはありますが、カビも細菌もともに鉄を必要とする生物であることに変わりはなく、結論を左右する要素にはなりません。重要なことは、あまりにもきれいに一致しているという点です。ここは単純に鵜呑みにしたくないし、ほかの方も同様の結果がみられるか、いわゆる再現性が気になるところではありますが、一例として、免疫反応の強さを鉄を物差しとして測ることができるのではないかと考えているところです。

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 つぎに、平常時の体温が36.5~37度くらいに高い状態を維持すれば、免疫の働きが活発化して病気にかかりにくいということをどこかで読んだ記憶があって、それを調べたのが、次のグラフです。深読みすれば、あるいは、体温が高いことで、免疫細胞と鉄との結合を促進する酵素の働きが強まるといったようなことが起きているのではないかとも考えるのですが、そこは根拠もわからないことから、横に置いておきます。

 グラフは、今年の8月に退院後、しばらく抗菌剤を処方されていたのですが、それを飲み終えた頃から、体温の変化(青の棒グラフ)とヘモグロビンの量(赤線)との対応を見たものです。青棒グラフは、日々の夕方の体温と調査期間全体の体温の平均値との差をとってグラフ化したものです。ヘモグロビン数値(赤線)は、グラフに表示するために、尺度を1/100に落として表示しています。

 ここでわかったことは、赤線が順調に高くなり、最近、最も高くなっていますが、これは、体温の変化に対応しているとみれないこともありません。

 ちなみに、体温を上げる工夫を様々に考えて、一つは、生ショウガを食べ始めています。その後、プラズマ乳酸菌も併用した直後から、平常時の体温が上がっています。これをどうみるか、判断が難しいところですが、プラズマ乳酸菌の直接の効果と考えるのは、ある程度継続して判断しないと無理があり、そうであるとすれば、ショウガの常食の効果がジワリと現れてきたということが正しいようにも感じられています。ただ、食べ過ぎると、胃腸を痛めるとも言われていますので、注意が必要です。

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発熱や胸痛があるのはなぜか

 -治癒が少し遅れても、症状を取ることを優先するか、治癒を早めて症状を我慢

するか―

(1)一般的説明

 高熱が出たり入ったりが、数日でも続けば、肺炎の疑いが強くなり、とりわけ、私たちのようにカビの影響を常時受けている者にとっては見逃すことのできない重要なサインの一つになりますが、高熱が出ない肺炎も実は2割程度はあるようです(考える技術_臨床的思考を分析する、スコット・スターンほか、P104)。これは、推測するに、外部から細菌やカビの襲来を受けずに、何らかの原因で肺が本来の機能を果たさなくなった場合、たとえば、肺胞が線維化して柔軟性を失って肺の動きが悪くなった(間質性肺炎)等がこれに当てはまるのではないかと思っています。

 以上を前提として議論を先に進めれば、高熱が出たり入ったりするような場合は、細菌性肺炎を疑って、迷わず医者にかかったほうがよいということになります。

 発熱とは、37.5度以上をいうとされます。なぜ発熱するかといえば、発熱することで体が免疫細胞の働きを活性化する方向にスイッチをいれるためです。仕組みとしては、外敵に遭遇した免疫細胞がサイトカイン(生理活性物質)を出して信号を脳に伝え、それを受けて、酵素の働きによってプロスタグランジンをつくりますが、この働きによって、脳では、痛みを認知すると同時に、体温を上げる方向に舵を切るという流れを持っているようです。このプロスタグランジンが作られる際に使われる酵素のはたらきを阻害して、化学反応を先に進ませないようにすれば、熱や痛みを取る創薬になるということです。

 ただ、熱があるからといって、安易に解熱剤を飲めば、治りを遅くすることにもなりかねません。我慢できるほどの熱であれば、薬を使わずに済ませることがよいのではと考えます。

 逆に、体温を常に36.5度~37度くらいの高めに維持できれば、免疫が適度に働いて病気になりにくいとも聞きます。体が冷えにくい状態とは、血流がよい状態をつくることです。それは血管を広げる方向に作用しますが、血管を広げるのは副交感神経の働きです。これは、リンパ球体質をつくるということにつながり病気をしない体質に導くのではと思っています。

 つぎに、胸痛についてですが、肺には知覚神経がありません。このため、病変が胸膜や胸壁に及んで肋間神経を直接刺激しない限りは、痛みを感じることはありません。気胸は胸膜を損傷する場合ですので、肋間神経を刺激して強い痛みを生じさせそうですが、寅三郎が経験した気胸は痛みを感じないものでした。また、肺からの痛みだと思っていたところが、実は食道の炎症(逆流性食道炎)が原因だったということもあり、胃液を強力に止めるプロトンポンプ阻害剤を処方してもらったところ、胸痛が治ったということもあるようです。

  このように、胸の痛み一つをとっても、複雑でおよそ想定外の臓器が痛みを発している場合もあります。医者であれば、様々な患者を相手にしますので、作業仮説を用意して、それが当てはまらない場合に予備の仮説もいくつか用意して、リスクの大きいものからつぶしていく、というように様々なストーリーを検討する必要があるのでしょう。しかし、我々は医者ではありません。一人の患者です。となれば、我々のやるべきことはただ一つ。敵を知る必要という点では共通ですが、医者の場合と異なって、己を知る必要はなく、確認するだけで足りるということです。自分はどこの臓器が弱いか、これまでにどういった病で苦しめられたか、その際に、見逃してはならない重篤な症状は何があったかをあらかじめ確認してことが大事で、かつ、それで足りるのです。

 

  ポンコツ車で楽しい日々を

 心と体を考えたときに、私たちは、カビを抱えた体で、いわば日々、ポンコツ車を乗りこなしているようなものではないでしょうか。生きている限りはこの車を使っていかなくてはなりません。壊れたら、その都度、修理しながらガタピシガタピシいわせながら、何とか乗りこなす。しかし、長く使っていると、どこが故障しやすいか、わかってきます。そこの部分を適度に修理しながら、乗っていけばいいのです。寅三郎はそう思います。

  車に乗る目的は、乗ること自体にあるわけではありません。どこか、行きたいところ(自己実現したいこと)があって、そのために乗っているはずです。乗ること自体に価値を見出しても仕方のないことですので、あまり意識しないで暮らしていきたいものです。

  

 (2)寅三郎の場合

発熱について、この病にかかって、発熱の症状は何度かありましたが、アスペルギルスを原因とするというよりは、インフルエンザウィルスや細菌感染を原因とする発熱でほぼすべてだったような気がしています。咳が多い日が何日か続き、痰が多くでるようになって、38度以上の発熱が何度かあって、気になって、病院に行くと入院を示唆されるといったような次第です。

 このようなことから、カビが原因して、発熱するという仕組みがあるのかどうか、もちろん、最初に侵入したときは、外敵として認識しますから、免疫細胞も、発熱を促すのでしょうが、すでに居ついてしまった住人(カビ)に対してはどうなのか。そこは、寅三郎にもよくわからないところで、いずれ先生に伺ってみたいと思うところです。ただ、いずれにせよ、私たちに必要なことは、外部から菌を寄せ付けない、もし入ったら、徹底的にたたく、それに尽きると考えています。

 胸痛については、たまにチクチクと胸の中心あたりが痛むことがあります。寅三郎の場合は、だいたいは、逆流性食道炎による炎症が原因でしょう。自分の弱みを把握しておくということは、むやみやたらと医者にかかるよりは大事なことだと思っています。

※次回は、「なぜ痰がでるか」の紹介をいったん中断して、アスペルギルスに罹っている自分が、いまどの段階にあるか、客観的に把握する指標が見つけられないか、悩んでみたいと思います。一患者に何がわかるかといわれれば、その通りなのですが、これが把握できるか、できないかは、この病気をコントロールしながら暮らしていくうえで、とても重要なことのように思います。

息苦しくなることがあるのはなぜか。

-肺炎、気胸の可能性も考えながら―

(1)一般的説明

息苦しいとは、これまで無意識にしていた呼吸がしにくくなり、浅い呼吸を繰り返すことを意味しますが、そこまではいかないにしても、なんとなく息苦しさを感じる場合も含めて、ここで整理を試みます。

 強い息苦しさを感じて、浅い呼吸しかできないということは、ガス交換が行われている肺の領域が狭くなっていることを示唆します。強い息苦しさを感じる原因をネット情報を参考に整理すると(末尾参考文献)、大きくは二つに分けて整理できそうに思います。一つ目は精神的なものを原因とし、過呼吸パニック発作などを起こす場合です。二つ目は、器質的な異常を原因とし、心臓から血液を送り出すポンプが弱って、心臓に戻る血液が肺でたまりがちになっておきるものと、心臓に異常がなくて、肺を直接の原因として起きる場合です。これには、COPD(肺胞同士を分ける膜が壊われ、広い空間をつくってガス交換が十分行われなくなったもの)と肺炎、気胸があります。参考文献に直接の言及がないので、わかりませんが、肺炎を原因とする場合とは、肺胞が線維化して柔軟性を失って肺の動きが悪くなった場合や、肺に水がたまってガス交換が損なわれる場合を想定しているのではと思います。肺胞に細菌が感染すると、これを退治するために血管内から免疫細胞が出てくるわけですが、そのときに血清成分も一緒に出てくるということなのでしょう。水で満たされるということは、ガス交換が阻害されるということでもあります。それを犠牲にしても、まずは細菌をやっつけることを選択した結果ではないかと寅三郎は勝手に想像を膨らませています。ただ、それについて触れた文献にこれまで接していないために、よくわかりません。

 強い息苦しさを感じるほどではないにしても、なんとなく息苦しさを感じる場合としては、痰が気道に絡んで、一時的に気道が狭くなった場合が考えられます。この場合、痰として排出されれば、息苦しさは解消されます。寅三郎は何度も経験しています。また、痰が詰まって気道が狭くなった場合には、呼気を出したときに喉の奥からヒューという喘鳴が聞こえる場合もあります。喉の構造を考えると、呼気のときは肺に近いほうの気道が収縮して、逆に口に近い方の気道が広がるということですので、あるいは狭くなった肺に近い方に痰が絡んでいるとそういった症状がでるのではないかと思っています。

 

(2)寅三郎の場合

 気胸について、寅三郎は二回経験しました。一回目は、今から15年前のことです。病院で肺の組織を取って、悪性か否かを調べる検査を受けた際、誤って胸膜を傷つけてしまい、空気が外側に漏れたことがありました。病院のベッドの上で目覚め、検査は無事に終わったと思っていると、医師に呼ばれました。レントゲンで、右肺の上葉部に半円のような形で黒い影が確認され、肺がぺコンとへこんでいるのが確認されました。医師からは一刻を争うといわれましたが、息苦しさは全く感じられませんでした。肺の癒着が進んでいたために、漏れ出たところが限定的だったためかもしれません。ただ、不安を感じ、そこの病院を退院し、ほかの病院で手術を受けました。それにしても、検査の説明の際に、そういったことも想定して、承諾書のなかに「検査時に、万一の際は緊急でオペをやる場合がある」と記載しておけば済むことだと思うのですが、気胸を起こして肺の委縮が強くなったときに、麻酔で寝ている患者を無理やり起こして、承諾を受ければいいとでも考えたのでしょうか。ずいぶん間の抜けた対応があったものです。

 二回目は、アスペルにかかって初めて入院した2年前(2019年)のことです。入院の理由は、一般雑菌で肺炎にかかったためでしたが、肺炎の症状も収まって、退院まじかになったある日、医師から軽い気胸を起こしている。ただ、おそらく放っておいても自然治癒するのではないか、心配ありませんといわれました。このときも全く息苦しさ、息がしにくい等を感じませんでした。レントゲンでよくみれば、肺がほんの少しだけへこんで、黒くなって写り、胸膜の外側に空気が漏れていることが確認できました。退院後の診察日にとったレントゲン写真では、空気の漏れは自然に収まっていました。先生の慧眼に感謝しました。一安心したことを覚えています。

 二度の気胸はともに息苦しさや息のしにくさを経験しませんでした。漏れたけれども、肺を包む胸膜が胸壁にべったりと張り付いていたことで漏れが局限したのかもしれません。しかし、もし、胸膜が胸壁に癒着していない状態で胸膜を損傷して、空気が外に漏れた場合を考えると、空気が肺全体を押しつぶし、一刻を争うということになったことは想像に難くありません。末尾に、この気胸という病気。物理的に胸膜を傷つけて起きる場合は当然ありますが、カビが影響して、胸膜側を損傷して空気が漏れるということはないのか、気になることではあります。いつか、先生に伺ってみたいと思うこの頃です。

(参考)

【特集】息苦しさ・息切れには命の危険も!症状として現れる病気まとめ | NHK健康チャンネル

 

 

なぜ咳がでるのか。

 (1)自分の病を深く理解することの意義について

16世紀フランスの外科医で、アンブロワーズ・パレという人がいます。「我、包帯し、神癒し給う」という言葉を残しています。この言葉はあまりに有名なので、どこかでお聞きになった方も多いと思います。当時、中世ヨーロッパは、キリスト教生活様式に至るまで支配していました。なので、神という言葉を使っていますが、現在に引き直せば、神とはヒトの体の免疫反応のことだと言っていいかもしれません。つまり、病気を治すのは、ヒトの体の免疫反応のほうであって、医師ではない。医師は患者が治ろうとする力を手助けするだけだと言ったような意味合いで理解できるかと思います。

 このことは、我々患者にとって、実はとても大切なことを指摘してくれています。もし、自分はもうだめだと絶望感に浸れば、免疫力は確実に落ちます。ヒトの免疫の7割は腸管にあり、残り3割は心にあるといわれますから、絶望感に浸れば、いくら医師が一人でがんばっても、あるいは治らないかもしれない。逆に、こんなくそ病に負けてたまるかと患者ががんばれば、それだけでも免疫力はそこそこの力を維持するはずです。そう考えれば、自分の体なんだから、医者任せにしてはいけない。医者に言われた通りに養生しているから大丈夫だ、じゃだめなんです。自分の体の状態を一番よく理解しているのは、自分自身なんだから。でも、思っているだけでは、なんら意味がありません。自分が主人公だという思いを持って、不断の努力で体の状態について理解を深めていく必要があると思っています。患者がその気構えを示せば、医者は必ず親身になってくれるはずです。医師と歯車のかみ合った二人三脚が、必ずや病を治してくれると信じています。

 以上のことを踏まえて、ここからは、寅三郎の症例を紹介していきます。寅三郎が経験した範囲で、といった限定はありますが、そこはご理解ください。これまで、先生から直接伺ったり、経験したり、あるいは自ら調べた結果を皆さんと共有して、この病に対する深い理解につなげていきたいと思っております。不明や疑問を生じたら、そこで立ち止まらずに、ぜひ、受け持ちの先生に聞いてみてください。そうして先生に聞いた結果を、ぜひ、この場にお寄せください。このことは、どうしようもなく面倒くさい病を、何度あきらめかけたかしれない、その都度なんとか気持ちを切り替えてがんばってきた、このくそ病を、正しく理解して退治するうえで避けて通れない大切なことだと思っています。

 

(2)一般的説明

―細菌性の肺炎、気管支炎の可能性も考えながら―

咳と似たような現象として、くしゃみがあります。ともに異物が体内に入らないための防御反応ですが、くしゃみは鼻の粘膜が刺激されることで起きるものです。これに対して、咳はその先、喉や、気管、気管支にまで異物が入り込んだときに異物を外に排出しようとして起きるもので、くしゃみよりは一段、深刻な症状ということになります。この点をまず押さえておきたいと思います。

 そのうえで、異物が鼻の粘膜を通過して、その先まで到達したとして、気管支で炎症を起こせば、気管支炎に、その先、肺で炎症を起こせば肺炎ということになります。食べ物に混じって胃に到着したものであれば、強い胃酸の働きでカビは溶かされるのではないかと思うのですが、そこは寅三郎の理解の及ばないところです。

 さて、呼吸器に影響を与える場合として、寅三郎の経験上、気管支炎のときは、咳とともにサラッとした、薄い黄色がかった痰がでることが多く、肺炎のときは、咳とともにドロッとした、濃い緑がかった痰が出ることが多かったように思います。とりわけ、発熱や息苦しさ、体のだるさなどの症状が加わるときは、肺炎の疑いが濃厚となります。早めにかかりつけの医師に相談する必要を考えます。体の中にカビを抱えているだけでも相当の負担です。そこに雑菌の侵入を許したら、大変なことになりますので。

 これら、気管支炎や肺炎の咳は呼吸器に異常がある場合ですが、呼吸器に異常がなくても咳が出ることがあることがあります。そのひとつが、逆流性食道炎による場合です。胃酸は0.3%程度の濃度の希塩酸が主成分といわれています。これはほとんどのものを溶かします。胃は粘膜で守られているため、自ら溶かされることはないのですが、胃と食道の境界あたり、噴門部分の筋肉の締まりが弱いと、特に横になったときに胃の食物が胃酸と一緒に逆流する場合があります(食後、2~3時間は横にならないほうがいいとは、その意味です)。そうすると、胃酸が食道の壁を荒らすだけでなく、それ以外にも食道の知覚神経を刺激して、その刺激が食道のわきの気管の神経にも伝わって、反射的に咳がでることがあるようです。食道と気道とは別々の組織なので、食道が炎症を受けて胸やけがあるのはわかるのですが、なんで咳がでることがあるのですかと、以前にどこかで先生に伺ったことがありましたが、そのときの返事がこれでした。

長引く咳の原因が実は逆流性食道炎にあって、それを治療したら治ったということもあるようです。

 

(3)寅三郎の場合

  寅三郎はこれまで4度の入院を経験しています。最初の入院は雑菌とカビのいずれが原因か不明の中での入院であり、2回目は雑菌を原因とする場合、3、4回目は空洞に水が溜まり、CRP(炎症数値)が大きくなったことを理由とするものでした。肺炎の診断に至る数日前の状況を日誌からひも解いてみました。その結果、激しい咳が数日続き、38度以上の発熱があり、濃い痰がでるといった症状がありました。ここで、熱が出なければ、あるいは肺炎以外の選択肢もあるのではとの期待もありましたが、その期待も発熱によってあっさりと破られました。もちろん、熱が出なくても肺炎の診断が下されることはあります。ただ、この逆に、一度きりでも高熱が出れば、肺炎の疑いが素人目にも高くなるといったことは気に留めておく必要があると考えます。

 誤嚥については、喉の嚥下作用の衰えによるもので、カビとは関係はありませんが、食事の際にたまにせき込むということはありました。誤嚥防止の体操を日常的に行って、飲み込む筋肉を鍛えておくことが有効だと思います。

 意外だったのが、逆流性食道炎によっても、咳を引き起こすことがあると知ったことでした。ちなみに、逆流性食道炎から生じる胸やけはとてもつらいものです。寅三郎は何度も経験しています。まずは水を飲んで、胃酸の濃度を薄めることをやりました。それでも治らないときは、牛乳を飲んで食道粘膜を被覆すること、さらには、市販されている玄米胚芽の粉をまとめて食べることもやりました。対策として、胸やけが起きたときは、日誌に胸やけが起こった旨を記入し、対策と効果をあわせて記録に残しておくと(気になる症状と奏功した対策は、マーカーで色付けしておきました)、今後の参考になります。寅三郎の場合は、市販の玄米胚芽粉をまとめて食べると、つらい食道炎がスパッと収まったように思います。以前は、胃液を抑えるプロトンポンプ阻害剤の処方を長く受けていた時期がありましたが、とても強い薬で、無理やり胃液を止めるだけで、根本治療の薬ではありません。まして、ブイフェンドという強い薬を飲んでいることを考えても、必ず飲まなければいけない薬は別として、できるだけ他の薬を飲みたくない。なので、胸やけの症状がでたときも、薬にこだわらないで治そうと決めています。ただ、定期的に年に一度程度、胃カメラで食道の状態は観察していただいています。

 カビの病を駆逐するうえで、栄養状態を万全にしておくことがぜひとも必要なことです。なので、消化器系に異常があれば、早いうちに治しておく必要があるし、それ以前に病気をつくらないようにしておくことが大事なことだと思っています。

そもそもカビって?

① そもそもカビって?

  • 一般的説明

 人に害を及ぼす可能性があるものとして、ウィルス、細菌、真菌(カビ)があります。大きさもこの順序で違いがあります。ウィルスは細胞自体が単純な構造をしていて、自力で増殖(自分のコピーをつくること)することができません。なので、ヒトの細胞に入り込んで、細胞を乗っ取って自分の分身を多く作ります。これに対して細菌は複雑な構造をしており、自力で栄養を取って増えることが可能です。栄養環境が整っていれば細菌はいくらでも増殖しますが、ウィルスは細胞をハイジャックできなければいつまでたっても増えません。これは実験でも確認されています。

 細菌と構造が似ているのですが、細菌以上にヒトの細胞に近い構造をしているのが真菌です。しかし、違いとして、ヒトにはない細胞壁を有します。また、細胞を包む膜も違います。ヒトの細胞膜はコレステロールでできていますが、真菌の場合はコレステロールと同様の働きをするエルゴステロールという物質でできています。この、エルゴステロールの形成を妨げるか、あるいは細胞壁の形成を妨げることができれば、創薬になります。これがブイフェンドなどの抗真菌薬です。

 「真菌と真菌症」という雑誌にあった論文で、動物実験で、血清鉄を過剰に与えたグループと与えないグループに分けて、両方にCandida albicansの胞子(真菌)を静脈注射して両グループを比較したところ、ともに腎臓に腫瘍がつくられた。ただ、鉄投与群では腫瘍内にカンシダの発育を認めたが、与えないグループでは認められなかったという結果が示されていました。血清鉄はヘモグロビンの材料になりますが、細菌や真菌にとっても重要で、この動物実験から、真菌は血清鉄を使って、自分の体つくりに利用しているのではないかと推測が働きます。ですから、逆に真菌から鉄を奪い取ることができれば、少なくとも増殖は抑えられるのではないかという気がしています。この結果は、朗報のように思いました。というのは、ラクトフェリンが市販されていますが、これは鉄と結合する性質があり、細菌から鉄(鉄イオン)を奪うことによって、抗菌作用を発揮するといわれているからです。食品中の鉄分を体内にうまく吸収させる働きもあります。市販のヨーグルトタイプは含まれる量が100mg程度と少ないことから、果たして長期摂取すれば免疫強化の効果が得られるものか、気になるところです。

 また、鉄が不足すると、胸腺が委縮するとの研究もあるようです(Bowlus, C. L. (2003). The role of iron in T cell development and autoimmunity. Autoimmunity reviews, 2(2), 73-78.)。いずれにせよ、鉄はこの病や、免疫のはたらきを理解するうえでキーワードのひとつになるような気がしています。

 

  • 寅三郎の場合

 真菌が血清鉄を自分に取り込んで利用しようとするのであれば、その分、鉄不足を起こして、ヘモグロビンが少なくなるのではないか、寅三郎は考え、ヘモグロビン量とβDグルカンとの対応を調べてみました(下表)。グラフから、慢性期(2016年)の最初の頃は、ヘモグロビン数値、リンパ球数値ともにやや高値推移で、体調が比較的よかった時期と一致しています。その後、急性期(2018年)を迎え、体調が悪化、βDグルカンの値が200以上(正常時の40倍)にまで増えますが、この時期は、ヘモグロビン数値、リンパ球数ともに次第に低値傾向にありました。今年に入ってからは、ヘモグロビン、リンパ球数ともに回復傾向にあります。体調もよいです。

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実は、一年ほど前からラクトフェリンの継続摂取をしています。ラクトフェリンは血液中には吸収されずに、腸管免疫系に作用するということなので、細菌の鉄イオンを奪い取る方向にはたらく結果、ヘモグロビン量が回復してきたのかなあとも考えましたが、効果のほどは寅三郎にはまだよく理解できていません。

(参考)

鉄 代 謝 か らみ た 深 在 性 真 菌 症 の 組 織 応 答

Medical Mycology Journal 30巻 pp254-259 1989

         (著者)阿部 章彦 加藤 匡志 稲葉 鋭

ラクトフェリンとは?7つの効果効能と飲み方・副作用 | Cury

症状の経過と現状

症状の経過を便宜上、急性期、安定期、慢性期、回復期と分類して提示してみました。医学的に認められた分類ではありません。また、常にこのような変化を辿るわけでもありません。あらかじめご了承ください。

 

①急性期

寅三郎は8年前(2013年)に発症しました。発熱や咳、濃痰(黄色)があり、からだがだるく、肺炎にかかったかと思いました。市内の病院を訪れ、レントゲン検査や血液検査を受けましたが、確かな原因はつかめませんでした。医師も首をかしげていましたが、とにかく診断をつけなければ処方もできないと思われたのでしょうか、膿胸との診断を受けました。抗菌薬、ウルソ(消化機能改善薬)、急な発熱時に飲むようにと解熱剤を処方され、7日飲み続けましたが効果がなく、その後、抗菌剤、ウルソに、咳止め、去痰剤が加わり、さらに5日ほど飲み続けました。しかし、ついに症状が改善することはありませんでした。自分の体のなかで何が起きているのだろうと不安に駆られました。体力が低下し、これまで自転車通勤していたのが、さすがにバス通勤に切り替えました。

 

②安定期

年が明けて、7年前(2014年)に仕事の関係で名古屋に引っ越しとなりました。ここでかかった病院でアスペルギローマと診断され、イトラコナゾール錠剤を処方されました。発病してから、正確な診断に行き着くまでに半年かかりました。名古屋に移ってからは喀血(鮮血)が1度ありましたが、特段、命の危険を感じることもなく、体調も戻り加減にありました。再び自転車を始め、坂の多い土地をママチャリで走り回りました。ただ、起きがけに、毎朝のように桃色の痰が出ました。

 

③慢性期

5年前(2016年)に名古屋での暮らしを終え、田舎での暮らしが始まりました。初めの1年くらいはカビの数値(βDグルカン)も低く、体調がよかったのですが、その後、ジワリと数値が高くなっていきました。これに歩調を合わせるように、夜間や朝方を中心に咳とともに、血痰に悩まされ続けました。止血剤なども飲んでいました。

 

④再び急性期に突入

3年前(2018年)には夜間に片手いっぱいほども喀血するようになり、肺に逆流すれば窒息するおそれもあることを医師に告げられました。夜寝るのが怖かったです。この頃が一番つらい時期でした。βDグルカンの血中濃度は200を超えていました。これは、正常値のおよそ40倍以上の量にあたります。レントゲンで、肺の片方の上半分(上葉部分)がほぼ真っ白でした。カビが減る様子もなく、カビのことはもうどうしようもないので、せめてウィルスや雑菌の影響を受けないようにと、特段の注意を払って暮らしていました。

 

⑤回復前期

2年前(2019年)に、この病に罹ってはじめての入院を経験しました。肺炎によるものでした。雑菌とカビのいずれが原因か特定ができず、医師のチームで、抗菌剤と抗真菌剤(静菌作用のあるもの)のハイブリッド治療をしていただきました。結果的にこのときの肺炎の原因は雑菌と思われました。抗菌剤の点滴治療のおかげで、回復しましたが、このときにイトラコナゾール液剤に切り替えました。これまでもイトラコナゾール錠剤で十分にカビは抑えられていたため、特段、薬を変える必要はなかったのですが、錠剤よりは液剤の方が、腸からの吸収がよいとの医師の判断でした。薬剤を変えたわけではないので、カビの増減に変化はありませんでした。

その半年後に再び肺炎となり、二度目の入院を経験することになります。これも雑菌が原因の肺炎でした。この時をタイミングにブイフェンドに切り替えました。点滴治療が奏功して、退院の頃は雑菌による菌球周囲の影は消えたものの、菌球はそのままに残りました。

しかし、さらにその8か月後、ついに待ち望んだその日が訪れます。CT検査で、カビでほぼいっぱいだった空洞内(菌球)はすっかりきれいになったんです。飛び上がるほどに喜んだのもつかの間、この頃からおよそ半年に一度の割合で入退院を繰り返すようになります。空洞内に水がたまったことが原因でした。水は新たな脅威となりました。

 

⑥回復後期

今年3月の検査で、血中のβDグルカン6以下、アスペル抗原(-)と正常値になりました。この頃になると、朝方の咳と痰はだいぶ少なくなりました。痰も、はじめのうちは、朝方にドロッとした色の濃いものが少量でる程度でしたが、最近は、咳とともにサラッとした薄い黄色の痰が出る日が多くなりました。今は念のため、ブイフェンドを続けています。

考察の順序

この病の経過を振り返りつつ、症状を踏まえた分析を以下の手順で試みていきます。

 

1.症状の経過と現状    

2.症状を踏まえた論点整理

 ①そもそもカビって?

 ②なぜ咳が出るか

 ③息苦しくなることがあるのはなぜか

 ④発熱や胸痛があるのはなぜか

 ⑤なぜ痰が出るか

 ⑥なぜ喀血するか、血痰がでるのか

 ⑦なぜCRPの数値が上がるのか(炎症反応について)

 ⑧なぜ空洞で繁殖するのか

 ⑨どういったタイミングで侵入するのか

 ⑩カビはどこへ行ってしまったのか

 ⑪空洞に水がたまるのはなぜか

3.血液検査結果からわかること(免疫の働きを踏まえて)

4.病に強い身体をつくるために必要なこととは?

5.薬剤(小腸から吸収~代謝~分布~排泄)

6.免疫を高める漢方薬について

7.副作用

8.ヒトは脳が発達したために余計なことに悩むようになり、治りづらくなった。

9.自律神経を鍛える呼吸法

10.克服の先に、元の生活を見据えて