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自ずから収まるところに収まる

(話題)免疫でコントロールできているかどうかを、時系列で把握できないか。

 この病と8年もの間、いやおうなしに付き合わされたおかげで、寅三郎は3つの疑問を生じました。

一つは、免疫の反応に対する疑問です。寅三郎の場合、発病初期に咳や痰、発熱があって、肺炎症状を起こしましたが(おそらくカビの影響)、その後は、発熱することもなく経過しました。その半年後に、アスペルの診断を受け、処方されたイトリコナゾールのおかげもあったのでしょう、体のだるさも、落ち着いた感じでした。いわば、急性期から、安定期(以前にアップした、「症状の経過と現状」をご覧ください)へ移行したわけで、体調的にもいったん安定した時期にはいりました。これは、カビが、免疫細胞の影響を避けてどこかへ避難したためではないか、その場合、免疫細胞は、犯人を積極的に探し出してでも駆逐するといった動きをしなくなるのではないかといった素朴な疑問を持ちました。

 二つ目は、カビが体の中のどこに潜んでいるかを客観的に見る手段がないということです。たとえば、ガン検査でPET検査があります。がん細胞は活発に増殖しますが、その際、大量の栄養素を必要とし、正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込むといわれています。この性質を利用して、ごく微量の放射線を発するよう合成されたブドウ糖グルコース)を使って、ブドウ糖を光らせておいて(いわば目印をつけて)、それを取り込んだガン細胞がどこにあるかをCTでみるやりかたがPET検査です。寅三郎も昔やったことがありますが、もともと脳はかなりブドウ糖を消費する場所のようで、全体が緑色に光ったような記憶がありますが、そういった定常的な場所のほかにブドウ糖が多く集積したところは緑色に光ります。こういった仕組みをカビでも利用することができないだろうかといった疑問です。

 三つ目は、そういった局在的な分布がわからないにしても、カビが血液中に存在する限りで、私たちはβDグルカンの血中濃度を測ることで、カビの総量をみることができます。この値の変化を免疫反応との対比で、一対一にみることができないものかといった疑問です。別の言い方をすれば、免疫は、役者が大勢いて、それぞれがそれぞれに持ち場をこなして成り立っています。しかし、それだと、役者が多すぎて、カビとの関係をみるのに対応関係が明確につかめません。この点、役者の一人の行動を追いかけることで、カビの増減との対比を見つけられればそれに越したことはありません。そういった指標がはたしてあるかといった疑問です。

 一つ目、二つ目の疑問は、判断を裏付ける情報が不足しているため、一旦、棚上げしておき、ここでは三つ目の疑問について、議論を先に進めたいと考えます。

 以前に「そもそも、カビって?」といった素材を上げて、議論したことがあります。そこで、議論したことは、ヒトの細胞とカビの細胞(真菌)はとても似たものであること、ヒトもカビも体を構成する重要な素材として、鉄(Fe)を使うことを参考文献から紹介しました。おそらくそこには、酸素を利用したいという戦略が共通に備わっているのだと考えますが、この鉄(鉄イオン)をカビ(真菌)から奪い去ることができれば、カビを減らすことができることになります。

 その一方で、鉄はヒトの免疫細胞にとっても欠かせないものです。免疫の主役であるリンパ球は骨髄のなかで万能細胞から作られます。ここで作られた未熟なリンパ球T細胞がやがて様々な働きをするリンパ球に分化して、それぞれの役割を果たすようになる(いわば一人前、免疫だから、一免疫前?になる)わけですが、分化する際に、関わるのが胸腺(胸の真ん中の硬い骨、胸骨の下にある)だといわれています。この胸腺が、鉄の不足によって委縮するという研究(Bowlus, C. L. (2003). The role of iron in T cell development and autoimmunity. Autoimmunity reviews, 2(2), 73-78.)があるようです。寅三郎は読んでいませんが、要約の一部を引用すれば「鉄は、免疫系の細胞を含むすべての細胞の増殖のための重要な金属である。鉄の不足は、免疫の液性および細胞性の両方にいくつかの欠陥を引き起こす。最も深刻な変化の一つは、末梢T細胞の減少および胸腺の萎縮である。」と紹介されています。

 ということは、鉄の不足を追いかければ、カビの増減を追いかけるうえで何らかの目安を得ることができるのではないか、ただ、手元には来院した際の血液検査の結果しかありません。そこで、寅三郎は、ともに鉄を利用する、ヘモグロビン(これは鉄とタンパク質の結合物です)とリンパ球数の対応に着目してみました。胸腺でのT細胞の分化が進まなければ、血液中に出動するリンパ球数にもなんらかの影響がみられるのではないかと考えたのです(下グラフ)。ここで、リンパ球数は、血液検査の結果で、白血球数(WBC)×Lymph(%)として算出して用いました。白血球の総数が少なければ、そのなかで占めるリンパ球の比率がいくら大きくても、リンパ球の数の増加はたかが知れているからです。グラフの左側目盛りはリンパ球数を、右側目盛りはヘモグロビン量を指します。このグラフに、カビの数値としてβDグルカンの値が急に大きくなった期間(50程度→150~200超え(該当期間)→6に変化)を付け加えました。すると、面白い対応が二つ浮かび上がりました。 

 グラフの赤矢印をご覧ください。慢性期、急性期、回復期をそれぞれ、グラフ内に示しました。一つは、βDグルカンの値の変動についてです。慢性期にはいって、寅三郎の体調はしばらくの間は安定していました。βDグルカンの値は50程度と低値でした。その後、急性期にはいって、喀血を経験したりしましたが、その頃はβDグルカンは200以上にも高くなりました。その後、原因はわかりませんが、回復期にはいって、6程度まで低くなって現在に至ります。この傾向が、ヘモグロビンとリンパ球の推移ときれいに一致していることがわかります。

 二つ目は、寅三郎は、2019年3月頃と10月頃、2021の3月頃と8月頃に入院を経験しています。とくに2019年3月と2021年3月の入院は、生死をさまよう厳しいものでした。この4つのいわば入院イベント時に共通していることが、リンパ球数の減少(オレンジ色のグラフの下がったところ)とヘモグロビンの減少ともに極小値を示しているという点です(但し2019年10月頃の入院時は明瞭でない)。前提として、慢性期と急性期はカビの影響、回復期は細菌の影響がより顕著に表れているということはありますが、カビも細菌もともに鉄を必要とする生物であることに変わりはなく、結論を左右する要素にはなりません。重要なことは、あまりにもきれいに一致しているという点です。ここは単純に鵜呑みにしたくないし、ほかの方も同様の結果がみられるか、いわゆる再現性が気になるところではありますが、一例として、免疫反応の強さを鉄を物差しとして測ることができるのではないかと考えているところです。

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 つぎに、平常時の体温が36.5~37度くらいに高い状態を維持すれば、免疫の働きが活発化して病気にかかりにくいということをどこかで読んだ記憶があって、それを調べたのが、次のグラフです。深読みすれば、あるいは、体温が高いことで、免疫細胞と鉄との結合を促進する酵素の働きが強まるといったようなことが起きているのではないかとも考えるのですが、そこは根拠もわからないことから、横に置いておきます。

 グラフは、今年の8月に退院後、しばらく抗菌剤を処方されていたのですが、それを飲み終えた頃から、体温の変化(青の棒グラフ)とヘモグロビンの量(赤線)との対応を見たものです。青棒グラフは、日々の夕方の体温と調査期間全体の体温の平均値との差をとってグラフ化したものです。ヘモグロビン数値(赤線)は、グラフに表示するために、尺度を1/100に落として表示しています。

 ここでわかったことは、赤線が順調に高くなり、最近、最も高くなっていますが、これは、体温の変化に対応しているとみれないこともありません。

 ちなみに、体温を上げる工夫を様々に考えて、一つは、生ショウガを食べ始めています。その後、プラズマ乳酸菌も併用した直後から、平常時の体温が上がっています。これをどうみるか、判断が難しいところですが、プラズマ乳酸菌の直接の効果と考えるのは、ある程度継続して判断しないと無理があり、そうであるとすれば、ショウガの常食の効果がジワリと現れてきたということが正しいようにも感じられています。ただ、食べ過ぎると、胃腸を痛めるとも言われていますので、注意が必要です。

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