自分らしく今を生きる!

自ずから収まるところに収まる

薬剤(小腸から吸収~代謝~分布~排泄)

 ここでは、ボリコナゾール(商品名ブイフェンド)について、薬の働く仕組みについて簡単に触れ、小腸で吸収された後、体から排出されるまでを考えてみたいと思います。

 まず、ブイフェンドが組織で働く仕組みについてです。この薬は、ヒトと真菌の構造の違いに着目して創薬されたものです。ヒトも真菌も核を有する細胞で構成されていますが、細胞を包む膜に違いがあります。ヒトの細胞は主にコレステロールで包まれますが、真菌はエルゴステロールで包まれます。コレステロールと同様の働きをするようです。このエルゴステロールの形成を妨げることに着目した薬がボリコナゾールです。小腸や肝臓での代謝をすり抜けることから、経口薬でも点滴と同じくらいの薬物量が血管内に入っていくようです。また、全身の組織への浸透性も広範囲であることから、よく効く薬であることは確かですが、その分、副作用も半端ないくらいに強い。肝臓はいうに及ばず、視神経への異常を引き起こすこともあります。寅三郎も、幻覚を見ました。副作用であることは事前に伺っていたので、いずれ消失するものとたかをくくって幻覚を楽しんでいたところも若干はありますが(笑)。

 つぎに、小腸の腸管からの吸収から先を考えます。薬の代謝(解毒)に重要な役割を示すのがシトクロムP450酵素(CYP;俗にシップ)です。この酵素は主に肝臓で薬剤の分解(解毒)に働きますが、ほかに小腸や腎臓などの多くの臓器にも存在するといわれています。様々な種類がありますが、そのうち薬の約半数の代謝に関わる酵素がCYP3A4で、小腸と肝臓に存在するようです。

※小腸から吸収

CYP3A4について。たとえば、高血圧の薬の一部、高コレステロール改善薬など、カルシウム拮抗薬を処方されたときに、グレープフルーツジュースを一緒に飲まないようにと、注意書きが書かれていることがあります。これは、グレープフルーツの成分が小腸粘膜上にあるCYP3A4という酵素の働きを阻害することで、薬の分解が進まず、そのまま小腸腸管から吸収されて、最終的に血管に届き、薬の効きが強すぎることがあるようです。

代謝

薬剤は小腸腸管から吸収され、門脈を通って肝臓に運ばれ、今度は肝臓で代謝され、無毒化が図られます。肝臓では酵素(シトクロムP450;鉄を含むタンパク質の一種)が薬物の代謝を担います。代表的な働きのひとつとして、油溶性に作られていることの多い薬に水酸化イオン(OH-)を結合させて、水溶性に変えることで、腎臓から排出されやすくするといった働きがあります。この酵素代謝される薬剤の種類は多く、このため代謝を阻害する(代謝を邪魔する)薬剤があると問題になります。

 たとえば、循環器用の薬もCYP3A4の酵素の働きによって代謝されますが、この酵素の働きを阻害する薬(抗真菌薬、とりわけイトラコナゾール)をあわせて服用した場合、循環器用の薬はイトラコナゾールによって(酵素の働きを)阻害されて、分解が進まず、血中濃度が高くなりすぎるといったことがあるようです。このことは処方薬同士に関わらず、一時的に市販薬も飲んでみようとするような場合にも同様の問題が起こりえます。市販薬だから効果も弱く、大丈夫なはずだではなしに、処方薬を飲んでいる方が、市販薬を合わせて飲む場合は、薬局に事前に確認することが重要です。

※分布

肝臓での代謝を免れた薬は、その一部が血漿(血液の上澄み)に含まれるタンパク質(だいたいはアルブミン)と結合します。結合を免れた残りだけが遊離薬剤となって、薬効を及ぼすことになります。なぜ、タンパク質と結合するのか、薬が組織に働くために油溶性につくられていて、そもそも細胞膜表面に付着しやすい構造になっているためではないかと想像しますが、寅三郎には本当のところはわかりません。ともあれ、これらが肝静脈を通じて心臓に戻り、動脈を通じて全身の組織にゆき渡るようになります。

※排泄

遊離薬剤は、腎臓の糸球体で血液からろ過されて尿として排出されます。では、タンパク結合した薬剤はどこで代謝されるか、文献を漁ってみましたがよくわかりませんでした。おそらくは、腎臓でタンパク結合を解かれて、ろ過されて尿として排出され、タンパク質はろ過されずに血液中に残り、再利用されるといった流れかと思います。ここで、何らかの原因で腎臓の働きが低下していると、再利用されずにそのまま尿中に排出されることがあり、これがタンパク尿といわれるものです。ただ、常に腎臓の病気ということではなく、一時的な不調の場合もこのようなことがあるようですので、過度な心配は無用ということでしょうか。

 薬剤が体外に排出されるもう一つの仕組みが、ウンチです。肝臓で作られた胆汁(消化液)が胆のうで一時貯蔵されますが、胆のうからこの胆汁がでて、十二指腸に排出され、大腸へ送られてウンチのなかに排出されるようです。ウンチの色は胆汁の黄褐色を反映して黄色をしているとか。<(_ _)>

 末尾に、ブイフェンドを長く飲んで真菌が薬害耐性を持つようになったら、薬が効かなくなるのではないかと心配される方も多いと思います。お気持ちはよくわかります。ただ、寅三郎はイトラコナゾールを6年内服して耐性は起きませんでした。それどころか、6年後にはβDグルカンの数値は6以下となり、改善がみられました。それでもブイフェンドに切り替えたのは袋の中のカビが減ることがなかったためです。実際、ブイフェンドに切り替えてから8か月も経過した頃は、袋の中が空っぽになりました。

 この点、コロナウィルスのように、球形の周りにスパイクをたくさん持っている構造であれば、変異はわかりやすいのですが、細胞壁の下にエルゴステロールで覆われた構造を有する真菌が、はたして細胞膜をどう変化させて耐性をつくりだすことができるのか、寅三郎には理解の及ばないところです。もし、そうだとしたら、ヒトの細胞膜だって、真菌に長くさらされるうちに耐性を持ったとしてもいいではないですか。なぜ、真菌は耐性を持って、ヒトの細胞は耐性を持たないのか。調子に乗って言い過ぎた感があります。<(_ _)>。高等動物であるヒトは細胞膜での変異という選択肢を捨てて、免疫システムを採用することにしたのでしょう。先日、耐性を持った真菌細胞を遺伝子操作の働きでリセットし、耐性を失わせることに日本の学者が世界で初めて成功したとの情報を同じ闘病の方から伺いました。5年ほど前に発表された論文だそうです。創薬として期待が持てる成果です。

 ただ、あらためて考えるに、真菌が耐性をもったとしても、鉄を奪えば増殖は妨げられます。また、ヒトの体には本来備わった細胞性免疫と液性免疫があって、これらに常時守られています。先のことを心配してもしかたがない。そうであれば、できることはただ一つ。免疫が働きやすい環境を作ってやること。これに尽きる気がします。

 最後に新薬の開発に向けた話題です。

 急性膵炎の薬で、ウリナスタチンがあって、これを抗真菌薬(アンフォテリシンB)と併用することで、アスペルギローマの空洞内の菌球が消失したとする論文を見つけました。ウリナスタチンは急性膵炎の薬ですが、膵臓は、様々な消化酵素を出す万能の器官で、膵臓が炎症を受けると、これら消化酵素の働きで膵臓自体がダメージを受けます。このため、消化酵素の働きを阻害して、膵臓へのダメージを減らそうとするのが、ウリナスタチンです。アブストラクトゆえ、作用機序の詳細は確認できませんでした。また、論文発表から20年ほどもたって、まだ、深在性の真菌症に対する標準治療に採用されていないところを考えると、副作用など、気になるところがあるのでしょうか。今後の進展に注目していきたいと考えています。

(参考)

ブイフェンド(ボリコナゾール)の作用機序:抗真菌薬 (kusuri-jouhou.com)

シトクロムP450とは? | ネットdeカガク (netdekagaku.com)

CYP(シトクロムP450)による薬物代謝と薬物相互作用について解説 - 薬剤師による調剤薬局の仕事解説 (chouzai-pharmacy.com)

Aspergillus fumigatus から産生されるエラスターゼ(病原因子しての意義と対策)、小川ほか.

抗真菌薬とウリナスタチンとの併用療法が奏効した慢性壊死性肺アスペルギルス症の1例 (jst.go.jp)

病に強い身体をつくるために必要なこととは?

 これまで、免疫の働きをメインに考えてきました。これは、この病(アスペルギルス)に立ち向かうには、やはり免疫が鍵を握ると考えたことによりますが、では、免疫を強めただけで問題が解決するかといえば、そう簡単な話でもなく、免疫が働きやすい環境を作ってやることが大事だということに気が付きました。

 これは、私たちの働く環境を考えればわかることです。会社、例えば清掃会社を例に考えてみましょう。面接で頭数が確保できた、研修施設を持っていて、社内研修もやった。配属先が決まり、それぞれの役割分担も明確になった。では、清掃能力を上げられるかといえばそう簡単な話でもない。たとえば残業時間がやたら多いとどうでしょうか。やってらんない。くたくたになって処理能力は当然落ちます。この点、人材にゆとりがあって、「お前、疲れたなら帰って休めよ。あとは〇〇にやらせるから」みたいな環境だと、処理能力が落ちることはありません。また、休憩時間があって、美味しいお茶とお菓子なんて出される会社だったら、頑張ろうという気になります。当然、体力、気力を充実させるだけの給与も必要でしょう。事務方のことも考える必要があります。たとえば事務のAさんが体調を崩して休んだとして、一時的にその方の仕事を残りの方が処理せざるを得ないといったことを考えると、二人分の仕事をしなくてはいけないことになる。それで忙しくなったからといって、給与を出すのが遅れたなんてことにでもなれば、それこそ処理能力が落ちることになりませんか。

 急な災害が起きて、清掃能力が大幅にダウンした場合を考えると、もっと深刻です。自力で立ち行かなくなったときに、では丸ごと事業を譲り渡すか、なんてなかなか考えないでしょう。そうとなれば、従業員だって解雇されるかもしれないし、そうでなくても待遇も悪くなることは考えられます。ではどうするか、外部から強力な応援部隊を依頼することで対処しようとします。その際に大事になってくるのは、受け入れ先でイニシャテイブをとることです。イニシャテイブを取って、どれだけの人数の応援部隊を必要とするかを決めて依頼する。全部を受け入れても対応しきれないからです。また、処理能力が回復したときには応援部隊にはすみやかに帰っていただかないといけない。いつまでも残っていただいたら、食事も提供しなくてはいけないし、正規社員と意見がぶつかったりして、以前の処理能力よりも落ちてしまうことになりかねません。

 長々とたとえ話をしましたが、こういった話の中に、実は健康を回復するヒントがあるように思います。それは、いくら免疫細胞がひとりで頑張ったところで、どうしようもないということです。体内環境を整えて、いつでも免疫細胞が働きやすい環境にしておかないといけない。

 そのためには、自分の健康は自分で守るといった心構えを持つことがまず大事です。医者任せでは病気は治りません。その意味で、医者は患者の応援団に過ぎないのであって、どんなに優秀であっても、医者が代わりに走り出すことはできない。患者自身が走り出さないことには何も始まらないということをまずは自覚することが重要です。

 つぎは、体のメンテです。体の中で代謝酵素が十分に使えるように、消化酵素は潤沢にしておかないといけない。とりわけ肝臓では多くの代謝が行われて様々な物質が作られます。その化学反応を促進するのが酵素です。しかも、消化酵素が不足をきたすと代謝酵素は代わりを務め、結果的に代謝不足を生じさせます。このように考えると、代謝不足に備えるには、消化酵素が不足をきたさないことが重要となります。加えて、代謝酵素は鉄を使うことがありますので、鉄の補充も考えないといけない。この点、もともと体内の鉄の管理は一定以上確保されているようです。また、鉄はそんなに体内に吸収されやすいものでもどうもなさそうです。そうなると、寅三郎がひそかに期待しているのが、ラクトフェリンです。鉄の管理を引き受けてくれるし、場合により、細菌(真菌)から鉄を奪い取って増殖を抑えることも期待されるからです。

 つぎに、大事なことが、栄養補給です。A. Marcosらの論文(2003)によれば「エネルギーや主要栄養素の摂取不足や特定の微量栄養素の欠乏による栄養不足は、免疫系を損ない、宿主保護の基本となる免疫機能を抑制します。最も一貫した異常は、細胞性免疫、補体系、貪食機能、サイトカイン産生、粘膜分泌抗体応答、および抗体親和性」に影響を与えると考えられます。胸腺の委縮にも関係するようです。そう考えると、三食きちんと食べて、よく寝て、ストレスを長く貯めない生活が望まれます。

 最後に、薬の効く仕組み、代謝に至るまでの過程が重要となります。薬が効きすぎても困るし、また、代謝されずに体内に残っても困るからです。この点を次回に少し敷衍して検討していきます。理解不足もあるかもしれませんが、お付き合いください。

(参考文献)

Marcos, A., Nova, E. & Montero, A. Changes in the immune system are conditioned by nutrition. Eur J Clin Nut 57, S66–S69 (2003).

血液検査結果からわかること(免疫の働きを踏まえて)

ここからは、文献を参考に免疫の働きについて整理し、あわせて血液検査結果、とりわけアスペルギルスに関わる部分に焦点をあてて考えます。

   まず、免疫の働きについて整理します。細菌(真菌)が侵入すると、パトロール役の顆粒球(好中球や単球)、リンパ球のNK細胞がまずこれをみつけ、貪食します。また、単球は組織に移行した時にマクロファージや樹状細胞に分化して、細菌を貪食すると同時に、その際にヘルパーT細胞に抗原を提示してB細胞に抗体をつくらせます。その一方で、単球は肝臓を刺激してCRPをつくらせます。抗体とCRPが抗原抗体反応を活性化させて溶菌を行うという流れです。

    ウィルスの侵入を受けた場合は、キラーT細胞(T細胞が分化して細胞傷害性を持つに至ったもの)が感染細胞ごと排除する仕組み(細胞性免疫)を持っていて、これに加えて、抗体をつくってウィルスに付着させてNK細胞がそれを貪食する(液性免疫)仕組みを整えていて、この両方を使ってウィルスを排除するようです。

 以上の整理を踏まえて、血液検査を考えます。細菌(真菌)感染した場合、まずは白血球全体の数値が急増します。内訳では、好中球(NEUT)比率が高まります。その後にリンパ球(Lymph)の比率が増えるとみられます。増えるタイミングはわかりませんが、獲得免疫ができるタイミングであれば、数日後ということになります。

 細菌(真菌)感染ののち6時間ほどの時間差をおいて、今度はCRPの値が上昇してきます。ただ、細菌(真菌)感染と違って、一般にウィルス感染では、値の増加は小さいという特徴があります。なので、高熱が出て、ではCRP(炎症反応)も高いかと言えば、それほどでもなく、おかしいなと思ってインフル検査を受けてみたら陽性だったということがあるわけです。

 では、アスペルギルス症の場合、これらの値はどういった変化をするか。アスペルギルスも真菌の仲間なので、基本的にこれまで検討したことがあてはまります。

 寅三郎のこれまでの検査結果を表にまとめましたので、表を基に考えてみます。特徴的なこととして、急性期に(2018年に標準をあてています)、白血球数の急激な増加と、顆粒球割合(ここでは大部分を占める好中球(NEUT)割合を示します)が高く、リンパ球(Lymph)割合が低い状況でした。これに対し、CRP(炎症数値)は高めながら、特段、大きな値を示しませんでした。真菌に罹患当初はCRPが高い値を示したように思いますが、居所を定めてからは(肺に居座ってからは)、免疫細胞が犯人捜しを怠けたのかなあと思っているところです。

 特徴的なことの二つ目として、ヘモグロビン(Hb)の増減があります。表からは罹患前に高い値を示し、急性期(2018年)にかけて次第に低くなって、その後、回復期に移行して再び高くなっていきます。炎症を起こすと、腸管からの鉄の吸収が悪くなることが原因しているようです。侵入した細菌に鉄を奪われないための体の防衛反応(鉄を奪われると細菌(真菌)は増加すると考えられます)ですが、腸管からの吸収を抑えた結果としてヘモグロビンが低い値を示します。ただ、以上の事実を踏まえれば、ヘモグロビン量の増減は、βDグルカンや抗体量(現在の保険適用は抗原量まで)の変化と合わせて考えれば、免疫反応が真菌などをどれだけ抑えているかを簡便にみる目安に使えるのではないかと考えています。

 どこの病院でもそうですが、βDグルカンの値や抗原数値など、カビの側の状況を示すことはしていただけますが、では、それに反応して体がどう対応しているか、言い方を変えれば、自分の体の免疫が、どれだけカビを抑えているかの説明がなかなかしていただけません。簡単ではないことは承知していますが、私だけでなく、患者は、そういった目に見える形での進捗を求めているのではないかと思います。ヘモグロビンの数値の変化をみてある程度判断できることがあれば、改善目標に据えることもでき、気持ちの余裕が生まれるように思うのです。

 なお、表をみるにあたり、慢性期、急性期、回復期は寅三郎の感覚で分類を試みたものです。この病に特有の医学的分類に基づくものではありません。また、常にこの流れを辿るわけでもありません。値も、その時期を代表する数値をとっていて、期間と期間の間でも細かな変動をしています。あらかじめ、ご承知おきください。

 

2013/8

(罹患前)

2016/6

慢性期

2018/9

急性期

2019/11

回復前期

2021/9

回復後期

白血球

3900

4500

9800

6400

4900

顆粒球%

-

72.8

85.4

78.3

61.6

リンパ球%

-

19.2

10.1

14.6

28.5

単球%

-

6.7

1.0

5.3

6.6

ヘモグロビン

15.4

14.1

13.2

13.7

14.1

CRP

-

0.8

2.7

0.51

1.05

 

(参考)

免疫~感染症に対する生体防御|ワクチノーバ株式会社 | Vaxxinova Japan K.K.

単球は組織内に移るとマクロファージになる 漢方医学療法研究会 (e-kanpo.jp)

(話題5)食物あれこれ、健康食品について

 食物は、小腸から吸収され、肝臓であたらしいタンパクに合成されたり、逆に有害な物質は分解(代謝)されて、体内から除かれたりしますが、その際に酵素を必要とします。

 酵素とは、体内で行われるこういった化学変化を進めるうえで触媒としての働きを持つタンパク質を言い、消化酵素代謝酵素があります。違いが分かりにくいですが、寅三郎は、ある物質を最小単位にまで分解する働きを消化、ある物質から全く性質の違う別の物質を作り出す働きを代謝と整理しています。たとえば、唾液にはアミラーゼという消化酵素があります(もちろん膵臓にも)。この消化酵素の働きでデンプンが最終的にブドウ糖に分解され、小腸の腸管から吸収されます。ここまでが消化の働きです。その後、ブドウ糖はさらに分解されてATP(エネルギーの基となる物質)に変わります。ここの過程が代謝で、代謝酵素が使われます。

 そこで、問題になることが、代謝酵素が十分にないと、エネルギーを生み出すにも、あるいは有害物質を分解することも十分に行われないことになり、体に負担になるという点です。このとき、代謝酵素は消化酵素の代わりを務められるが、消化酵素代謝酵素の代わりは務められないということがあります(参考文献)。どういうことかといえば、消化酵素が不足すると代謝酵素が穴埋めし、結局は代謝酵素の不足をきたすということのようです。そうならないためには、ニンジンを摂取するときは、ニンジンの持つ消化酵素も一緒に体に入れることが重要になります。この際、消化酵素は熱に弱いという問題がありますから生での摂取が望ましいようです。

 子供の頃、生野菜は体の調子を整えるから、食べたほうがいいんだぞと親に教わったものですが、その理由は、参考文献から、酵素の働きが関係していたんだと理解した次第です。加工食品が店頭を飾ることが多い現代社会です。加工食品は確かに栄養はありますが、熱処理されているため、食品独自の消化酵素を失っています。このため、消化には体が本来持つ消化酵素を使わざるを得ません。その結果、代謝酵素不足を生じることがあり、体調不良を引き起こす引き金になるとも限りません。となれば、加工食品を食べる際にはできるだけ生野菜、果物も積極的に摂取する必要があると寅三郎は感じています。

 以下に、寅三郎が摂取している栄養食品等を参考までに示します。この組み合わせがいいかどうかは、個人の体質の違いなども考慮すれば、一概に当てはまるものではありませんが、一般に体によいと言われるものを列記してみました。

 このうち、ラクトフェリンについては、胃液で消化酵素ペプシンの働きで、ラクトフェリシンに変化し、抗菌効果がものすごいことになるらしいです。参考文献から拾うと、「ラクトフェリンが胃で分解されたのちにさらに強力な成分「ラクトフェリシン」に変化するのですが、細菌や真菌への抗菌作用がラクトフェリンに比べて数十倍から数百倍も高いという結果がでています。ラクトフェリンラクトフェリシンの違いは細菌などへのアプローチ方法になります。ラクトフェリンは細菌の増殖を抑制する働きがあり、ラクトフェリシンは細菌や真菌などの細胞膜を傷つけることで殺菌までおこなう働きがあります。」とのことです。それでは、胃でラクトフェリシンをつくらせればいいではないかとも思われますが、そう簡単な話でもなさそうで、参考文献では双方が必要だと結んでいます。ラクトフェリシンについては、2003年、2011年に論文紹介があるようですが、寅三郎は詳細を知りません。特に真菌に対する殺菌効果については、今後の進展を大いに期待したいところです。

 

品目

素材

寅三郎が狙っている効果

摂取開始時期

ニンジンジュース

食品

酵素の補充

今年11月~

発酵玄米胚芽粉

食品

酵素の補充

昨年~

ラクトフェリン

サプリ

カビから鉄を奪う作用(弱体化)

NK細胞を活性化

昨年~

プラズマ乳酸菌

サプリ

司令塔となるリンパ球を活性化

今年10月~

R1

サプリ

NK細胞を活性化

昨年3月~

生ショウガ

食品

(体温を上げ)免疫の働きを強める

今年9月~

クルミと緑茶の

組合せ

食品

炎症を抑える

今年~

(参考文献)

ラクトフェリシン(lactoferricin:LFcin)|用語集|腸内細菌学会 (bifidus-fund.jp)

ラクトフェリンとラクトフェリシン | ラクトフェリン効果口コミ研究所 (xn--hckp9e6b7ek7d.xyz)

2.酵素養学とは | NPO法人 日本酵素栄養学協会 (n-kouso.org)

空洞に水がたまるのはなぜか

(1)一般的説明

空洞にたまったものは水なのか、あるいは水以外の何者なのか。確定診断には名古屋で経験したような気管支洗浄を行って内容物を分析するしかないように思います。ただ、寅三郎は名古屋以来、こういった検査を受けていません。気管支鏡による検査は、気管支に損傷を与える可能性もありますので、簡単な検査ではないことは確かです。できればやりたくないのでしょう。それはさておき、たまったのは本当に水なのでしょうか。

 水はそもそもどこから来たのかを、受け持ちの先生に伺ったことがありました。血管からしみ出したとのことでした。先生からは、「免疫細胞は、水があった方が遊動しやすいでしょう」と。となれば、血液成分から来ているのは間違いありません。私は、血管のどこかがカビの影響でやられて、そこから漏れ出したのではないかと思いました。であれば、それは水ではなく、血液ではないかと。ずっとそう考えてきたので、先生のお話を伺って、すっかり安心したことを覚えています。血管が欠損したわけではなく、免疫細胞の都合で水がたまったということです。しかし、あらためて考えると、それでは、肺炎になったらすべて水が溜まるのかというと必ずしもそうはなっていない。本当のことが知りたいと思いました。

 血液成分は、血漿(無色透明)と血球(赤色)に分かれます。血が赤いのは赤血球のヘモグロビンに由来します。血漿の9割は水、残りはタンパク質とその他の栄養素です。また、タンパク質の6割はアルブミン(ALB)で占めます。血液検査で総タンパク質の量に0.6掛けすると、だいたいアルブミンの量になるのでこのあたりの見当がつきます。アルブミンの大切な働きの一つが、血液中の水分量の調節です。アルブミンが減少すると、末梢血管先端から血管外の組織に血漿成分全体の9割を占める水の一部が流れ出します。あとでわかったことですが、肺に水がたまったのは、丁寧に言えば、どうもこういったことのようでした。それがすべてではないにしても、アルブミンの減少が関与している。寅三郎が不安そうに聞いてきたので、安心するために話したことがそれだったのでしょう。それを知ったときに、先生の優しさを感じました。そして、先生のお気持ちを裏切らないように寅三郎もこの病としっかり向き合い、克服しようと思いました。

 医者は自然科学者です。その領域は生物学から生化学に至るまで広範囲にわたります。その一方で、実務家でもあります。なので、思い描く病像を矛盾なく説明できることが科学者としての達成感であることは間違いありません。ただ、実務家としての達成感はそこにはない。患者と真摯に向き合うことを通じて、患者が希望を持って病に立ち向かえるように説明することにあるはずです。患者は希望の持てる答えを求めています。たとえ、それが多少の説明の幅を含んでいるとしても。素人が何をかいわんやですが、患者が医師に求めていることはまさにそういうことではないかと思っています。

 

(2)寅三郎の場合

寅三郎は、アスペルギローマという特殊な病に罹ったために、5年前(2016年)に名古屋から田舎に引っ越すときに、ネット情報で引っ越し先の病院探しから始めました。名古屋の病院で紹介状を書いていただく際に、「田舎に引っ越すようだけど、いい病院はあるんですか」と聞かれました。先生のお立場からすれば、この病気の専門医である自分が、なぜに田舎の医師に紹介状を出さねばならぬのかという思いもあったのでしょう。

 では、専門病院はこの病に対して、何か特別、アグレッシブな闘いをしてくれたでしょうか。結局は維持療法しかしてくれなかったじゃないかという思いが寅三郎にはありました。実際、治療を続けたにも関わらず、カビはジワリと増えていたからです。なんでもっとアグレッシブな対応をしていただけないのか、不満を募らせてきました。信頼関係が築けなければ、病が好転するはずもありません。都会の病院を放擲されるように田舎に引っ越しました。振出しに戻って、ゼロからのスタートであることを自覚せざるを得ませんでした。それからは病との過酷な闘いが幕を開けることになります。

 その後のことを少しお話しさせていただければ、引っ越しして、二年ほどたったとき(2018年)に、とある先生が、寅三郎の受持ち医になりました。この頃は、いわば急性期が再来した頃でしたから、病態は最悪。血痰どころか、血まで吐くといった状況でした。先生からは、このままではいずれ取り返しのつかない事態に陥ると説明を受けました。いつ命を落としてもおかしくない、そんな状況でした。この頃に寅三郎は3年日記を買い求めました。せめて、65歳まで生きて、一年くらいは年金をもらってみたいとの思いからでした。

 しかし、この先生の治療を受けられたことをきっかけに、それまで空回りしていた歯車は再びしっかりと回り始めます。出会い、運命とは本当に不思議なものです。先生からのアドバイスは概要つぎのようなものでした。現在考えられるだけの選択肢(治療の最先端)を示して、どの治療方法を選択するかを自分で選んでくださいと。それぞれにリスクも示されました。そのうえで、望みとする医療機関にどういった先生がおられて、何を専門にされていて、どういった治療実績を上げられているかを示したうえで、その先生に紹介状を書くから、直接、可能性を探してきてくださいということになりました。お言葉に甘えさせていただき、数か月をかけて、あらゆる可能性に当たりました。その結果、今の先生の治療が最良であるとの考えにたどり着き、再び、先生のお世話になることとなりました。先生との信頼関係がまさに強固になった瞬間でした。

 今更に考えると、このことは、仏教の説話にも通じるように思いました。ざっと紹介すると、お釈迦様のもとを子供を亡くして嘆き悲しむ母親が、我を失いながら、死んだ子供を生き返らせてほしいと相談に来ます。お釈迦様は「あなたが、死人を出したことのない家を見つけることができたなら、子供を生き返らせてあげよう。」と母親に約束されます。それを励みに、母親は、必死になって親戚の家、友人の家と、あらゆる家という家を訪ね歩きました。しかし、結局、そのような家をさがすことができませんでした。釈迦の元を再び訪れたときには、母親はすべてを悟った表情になっていた、というお話です。どこかに病を治してくれる名医がいるはずだ、そこで治療を受けられれば、治るはずだと、「ブラックジャック」を求める当時の自分と同じだと思いました。先生は、それをいさめてくださいました。治すのは自分(の免疫)であると。自分がしっかりしていれば病は必ず治る。腹をくくりなさいと。その心構えができたなら、あらゆる助力を惜しみませんと。

 その後、肺炎も経験し、一時は命に係わる病態となりましたがそれを乗り越え、病は落ち着きを見せ、再び沈静化へと向かいました。先生はその後、大学に移っていかれ、寅三郎の受持ち医も現在の先生に変わりました。しかし、現在の先生も熱血医です。患者本位で一緒に考えてくださる。考えられる限りの選択肢を複数検討、提案してくださる方です。おかげさまで、様々なことを学びました。先生たちのおかげで、いま、寅三郎はとても健康に近い状態にまで回復しました。 

カビはどこへ行ってしまったのか

(1)一般的説明

 空洞に巣くっていた菌球は、痰に混じって出尽くしたように感じられました。ではカビは本当になくなったのか?「いったい空洞内にカビは残っているのでしょうか」と受持ち医に伺ったことがあります。先生からは「空洞の中に多少は残っているのではないか、それ以外には存在していない」との返事。しかし、CTで見た限り、中は空になっていて、カビがいる気配はありません。血液検査結果でも、アスペルギルス抗原は0.3(-)、陰性でした。いったいカビはまだ空洞内に潜んでいるのでしょうか。

 アスペルギローマは空洞に居座って菌球をつくることを病態とします。そうであれば、他へ移ることは考えづらい。仮に移ろうとすれば、血管内に入って移動しなければなりません。しかし、血管内には免疫グロブリン(抗体)が控えています。もし、カビが入れば、これに付着し、抗原抗体反応を起こすに違いありません。カビからすれば、いわば地雷地帯を無防備で歩くようなものです。とてもありえない。そうであれば、空洞になったようにはみえるが、空洞内に若干量はとどまっていて、たまたま肉眼で見えないだけではないかと寅三郎は考えています。

 しかし、抗原検査は陰性になっているではないかという淡い期待もあります。ただ、検査精度から考えて、0.3以下の数値は検出の限界だろうと思います。それ以下のものはあったとしても、これ以上に増えない限りはおそらく検出できない。そうであるならば、この先、増えたらたたく。ひたすらモグラゲームのようにたたき続けるしかないじゃありませんか。そして、それが人間が本来備えている機能でもあります。私たちの体は日常的に外敵にさらされています。それを考えさせてくれたイベントが、いわば今回のアスペルギルス感染でした。となれば、我々にできることは限られています。それは、免疫が働きやすいような環境を整えてあげること。これに尽きます。

 

(2)寅三郎の場合

いまは無いように見えるが、少しでも残っていると後から「ジワリと増える」。これがカビの特徴のように思われます。寅三郎は、6年前(2015年頃)、名古屋で暮らしていた頃に、カビの菌球は袋の1/4程度しかありませんでした。それが、その後3年くらいかかって袋いっぱいまで増えました。イトラコナゾールをまじめに飲んでいたにも関わらずです。そうであれば、いったん空になったように見えるけれども安心はできない。見えないだけで、若干はあるかもしれない。

 寅三郎は、細菌や真菌の侵入を許したときに備えて、ラクトフェリンによる鉄の調整(現在、効果を試験中)に励むこと、良質のたんぱく質を摂ること、免疫環境を高めるために(夕方の)平均体温を36.5度~37度に高め維持することを心がけています。

※寅三郎は、一週間ほどブログの更新を休ませていただきましたが、本日再開することといたしました。毎日更新していきます。引き続きお読みくだされば、幸いです。

(話題4)体重減少の理由について考えてみた

 病状が悪化していた3年前(2018年)に時計の針を戻すと、この頃はずいぶん体重が少なかった記憶があります。平常時に58kg程度ある体重が、52kg程度しかありませんでした。食欲はそれなりにあるのですが、食べても体重増加に結び付かない。あばら骨が浮き出た自分の体を見るのはとても不安なことでした。自宅での食生活について栄養状態を診断していただいたこともありました。

 内科医で、漢方医の資格も併せ持つ先生にご相談したところ、「免疫系統が回復すれば体重も戻ってきますよ」と言われたことを覚えています。免疫系統が回復すれば、なぜ体重が戻るのか、聞きたかったけれども、それ以上に聞くこともしませんでした。

 考えてみれば、体を動かせばおなかが減ります。ネット情報などを参考に以下に紹介すれば、おなかが減るのはエネルギーを使ったから。では、このエネルギーはどこから得られたかといえば、私たちの体は、食物を分解して得られたアミノ酸を組みなおして組織をつくっていますが(同化作用)、この過程でエネルギーは生まれません。エネルギーが生まれるのは逆の過程、つまり、体の組織を分解したとき(異化作用)とのことです。別の言い方をすれば、エネルギーが生まれるのは蓄積ではなく、消費の過程です。体重減少はここの過程でおきると思われます。日々の食事はおろそかにしてはいけない理由がこのことでわかります。

 以上は日常的な場合ですが、たとえば、外部から細菌などが侵入して、咳をしていたりすれば、呼吸筋を動かしますから、当然、エネルギーを消費します。また、発熱すれば、その分エネルギーを消費します。細菌の影響で、免疫系の働きが活発化して、肝臓でCRPが盛んに作られれば、CRPアルブミン(タンパク質)を分解のうえ、再利用してつくられますので、体重減少に結び付くのではと考えられます。先生が、「免疫系統が回復すれば体重も戻ってきますよ」と言われた趣旨は、この文脈で理解できると考えています。

 では、アスペルギルスではどうなのか。アスペルになると、炎症を引き起こします。その際に、鉄の吸収障害も同時に引き起こすようです(参考文献)。一部引用しますと「血液中に入り込んだ細菌は、鉄をエサに増殖します。入り込んだ細菌にエサ(鉄)をやらないように」腸管から鉄の吸収が抑制される。「「兵糧攻め」にすることによって、生体を守っているのです。」ということは、やっぱり、鉄がキーワードだったんだ。細菌に対しても、真菌に対しても。溜飲を下げた思いがしています。

 脱線しました。話を戻します。炎症のことです。寅三郎は、この病にかかってから、CRPが0.8程度と、慢性的に高い状態が続いています。これは、アスペルギルスによって組織が傷害を受け、それがいまだに続いているためではないかと考えるのですが、このことが、筋肉を細くし、体重の増加を妨げている原因になっているのではないか、若干、気になっています。このため、積極的に良質のたんぱく質を摂るように心掛けています。

※寅三郎のブログをいつもお読みいただき、ありがとうございます。寅三郎にとって、皆様の閲覧が大きな励みとなっており、また、書くことで、自分の病と客観的に向き合うことを心がけてきました。ただ、この病に対する勉強を少し深めたいと思っており、一週間程度、更新を休もうと思っております。また、皆様にお会いできる日を楽しみとしつつ。

(参考文献)

炎症時になぜ「鉄欠乏」になるの?? (dr-okudaira.com)